神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

お母さんは、あれこれと言葉を尽くして、私を説得しようとした。

「確かに、ついていくのは大変だと思うけど。でも、Sランクの授業を受けられるのは、とても貴重な体験なのよ。何と言っても、国内最高峰の学校なんだから」

「…それは…」

「行きたくても行けない子が、たくさんいるのよ。お母さんだってそうだったわ。自分がAランクじゃなくてSランクだったら、って何度思ったことか」

「…」

そんなこと、私に言われたって…。

…お母さんにだって、私の気持ちなんて分からないじゃないか。

「それに、今はDランクでも、このままSランクの授業を受け続けたら、Cランク、Bランク相当に成長出来るかもしれないじゃない」

とは言うものの、お母さんだって本気でそれを信じている訳じゃないことは明白だった。

要するに、世間体の問題だ。

自分の子が、最底辺のDランクだなんて…。

そんなことがバレたら、恥ずかしくて私と一緒に外を歩けない。

それに、下の妹や…お腹の子にも、Dランクの姉の存在は、好ましいものではない。

だからせめて、学校だけは…このまま、Sランクの魔導学校に通って欲しい。

例えどんなに落ちこぼれでも。

「弱音を吐いちゃ駄目。努力しなければならないのは、どの学校に行っても同じことよ」

お母さんは、そう言って私を諭した。

「Dランク適性なのに、Sランクの学校に通わせてもらうなんて、こんな機会は滅多にないのよ。感謝して、今の学校に行きなさい」

「…」

「ね、ベルーシャ。お姉ちゃんなんだから、お父さんとお母さんを困らせないで」

「…。…うん」

そんな風に言われては、私には何も言い返せなかった。

ただでさえ、三人目の子が生まれようとしているのだ。

これまでだって、散々私の教育の問題については悩まされてきたのに。

これ以上、少なくとも今は、厄介事を背負いたくない。

そんなお母さんの気持ちも、よく分かった。

私だって同じ気持ちだ。

これまでだって、お父さんとお母さんをいっぱい悩ませてきたのに…。

…それに、出来ることなら我が子にはSランクの学校に通って欲しい。という親心も、理解出来ない訳じゃない。

例え実力が伴っていなくても…我が子には、優れた学校で、優れた授業を受けて欲しい。

折角、何かの間違いだったとはいえ、高嶺の花である魔導学校に通っているのだから。

同情心からだとしても、学校の先生方にも、通うことを許されているのだから。

自らその特権を捨てて、あろうことか、一番最底辺の学校に転校したいとは…。

そんなの勿体ない。学校側が許してくれる限り、このままSランクの魔導学校に通って欲しい…。

…そう思うよね。親なら、誰でも。

結局のところ、私が我慢すれば、それで問題は解決するのだから。