神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

なんとも複雑な思いだった。

両者の意見、どちらも理解出来るからこそ、辛かった。

みんなが私に同情してくれているのは分かる。

…だけど、私は同情されたくなかった。

私は弱者なんかじゃない。そりゃ出来損ないのDランクだけど、でも…守ってもらわなきゃならない、助けてもらわなきゃならない人間じゃない。

私だって、ちゃんと魔導師なのだ。

みんなに比べれば下手くそだけど。才能なんてないけれど。

私だって…みんなと同じ魔導師、なのに。

助けて「あげる」なんて言われたくなかった。

そういう点では、気を遣ってもらうよりも。

あの男子生徒みたいに、はっきりと「ここはお前の居場所じゃない」と言ってくれる方が。

そっちの方が…まだ、気分は楽だった。

その通りだ、って自分でもそう思うから。

誰も私に気を遣ってくれなくて良い。寛容になんてならなくて良い。

毎日居残りしなきゃいけないなら、そうしたって構わない。

私もみんなと同じように、一人前の人間として扱って欲しかった。

…それなのに…。






「それじゃ、今日の宿題の不合格者を発表します。名前を呼ばれた生徒は、今日の放課後に第二自習室に集まってください」

担任の先生が、今朝提出した宿題のノートを机に置き、クラスメイトみんなにそう言った。

毎日、このタイミングになると、生徒達は緊張する。

ここで名前を呼ばれると、今日の居残りが確定してしまう。

…いつも思うけど、不合格者じゃなくて、合格者の名前を呼んであげれば良いのに。

名前を呼ばれたらアウトなんて…血も涙もない。

だけど、これがこの学校のやり方なのだ。

そう言われれば、私には何も言い返せない。

「出席番号順に呼びます。…まず、◯◯さん、◯◯さん、それから◯◯さんと…」

次々と、今日の不合格者の名前が呼ばれていく。

名前を呼ばれた生徒は、がっくりと肩を落とし。

自分の名前を呼ばれずに済んだ生徒は、ほっと胸を撫で下ろしていた。

私の前の席に座っている、あの女の子は呼ばれなかった。

「◯◯さん、それから…」

さぁ、そろそろ私の番だ。

自分なりに一生懸命解いて、提出したけれど。

とてもじゃないけど、合格点に達しているとは思えない。

結局、宿題を写させてくれるという申し出も断ってしまったし。

私が不合格なのは明らかだった。

…しかし。

「最後に、◯◯さん。今日の不合格者は以上です」

先生は、ぱたん、と名簿を閉じた。

…えっ?

…私は?私、名前を呼ばれなかった。