神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

だけど、クラスメイトの全員が、私に同情してくれる訳ではない。

「おい。卑怯な真似するなよ」

私と女子生徒のやり取りを見ていた、別のクラスメイトが割って入ってきて。

私が写そうとしていたノートを、バッと取り上げた。

「ちょっと。それは私がベルルシアちゃんに見せてあげてるのよ。何で取り上げるの」

「何でじゃないだろ。人のノートを写して宿題を済ませちゃいけない」

正論。

ぐうの音も出ない、ド正論だった。

クラスのみんなが、私を気遣って、ことさらに優しくしてくれる訳じゃない。

中にはこうして、Dランク適性の私に、はっきりと敵意を剥き出しにするクラスメイトもいる。

彼らは、私がこの学校にいることを認めていない。

当たり前だ。

この学校は本来、Sランク適性の生徒しか入学出来ないのだから。

そんな選ばれしエリート校に、たかがDランク適性の私がいることが、納得出来ないのだ。

ましてや、そんな私が特別扱いされていることに耐えられない。

だから…こうして、はっきりと私に、敵意を向けてくるのだ。

「そりゃあ、私達は駄目だけど…。でも、ベルルシアちゃんは別に良いでしょ」

女子生徒は口を尖らせて、そう言い返した。

「良くないだろ」

「良いの。だってベルルシアちゃんの魔導適性はDランクなんだから。私達が当たり前と思ってやってる勉強も、ベルルシアちゃんには難しいのよ」

…。

「クラスメイトなんだから、気遣うのは当然のことでしょ?」

「気遣うのは良いけど…。宿題を写させるのは駄目だろ。それじゃ本人の為にならない」

「なんでそんなことを言うのよ?毎日居残りさせられたら、可哀想じゃない」

「何が可哀想なもんか。Dランクの癖に、この学校に入学したのが間違いなんだよ」

二人共、考え方は違えど。

私のことを思って、そう言ってくれているのだということは分かっていた。

それにしたって、本人を前に二人共言いたい放題。

「それは…だって、ベルルシアちゃんだって知らなかったんだから、しょうがないじゃない」

「しょうがない、で済ませて良い問題じゃないんだ」

「じゃあ、放っとけば良いっていうの?魔導は人の為に使うべし、って学院長先生だって言ってたじゃない」

「それはそうだけど、でも甘やかせって言ってる訳じゃ…」

「…もう、良いよ」

いたたまれなくなって、私は思わず口を挟んでしまった。

…普段は、こういうことにはあまり言い返さない。

所詮Dランク適性の私が何を言っても、火に油を注ぐだけだからだ。

でも…今日は、何だか我慢出来なかった。

「お願いだから、私のせいで言い争わないで…」

両者の意見、どちらも…私は、ちゃんと分かってるから。

私は、あなた達より遥かに頭が悪くて、出来も悪いけど。

でも…私には、ちゃんと分かっているから。

自分が、この学校に相応しくない人物だということを。

「喧嘩はしないで。お願いだから…」

「そんな、ベルルシアちゃん…」

「別に喧嘩してる訳じゃない。僕は正しいことしか言ってないんだから」

そうだね。その通りだよ。

君の言うことが正しい。…それは私にも分かっている。

だけど、他にどうすることも出来ないんだ。

私の魔導適性は、Dランクなんだから。