神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…お母さんのお腹の子が、Sランク判定を受けた翌日。

その日は土曜日だったけど、私は制服を着て、学校に行った。

Sランクの魔導学校は、平日はもちろん、土曜日でも授業があるのだ。

何なら、月に1回、日曜日にも特別授業がある。

半日授業なんて優しいものじゃなくて、ちゃんと朝から夕方まで、みっちりと授業が詰め込まれている。

だけど児童達は、そのことを辛いとか、疲れたとかは言わない。

自分達はSランクのエリートなのだから。将来、国を支える優秀な魔導師になるのだから。

その為には、一分一秒たりとも無駄にしてはいけない。

毎日懸命な努力を続け、心と身体を鍛え、魔導の才を伸ばす。

それが、Sランクである自分達に与えられた使命。

学校ではそう教えられていたし、だから当然、子供達もそんな風に思い込んでいた。

「お情け」でSランクの学校に通わせてもらっている私も、そのように考えなければならないのだろう。

実際、私は学校の先生にも、お母さんにも、何度も言われた。

「あなたはこの学校に通わせてもらっているのだから、人一倍努力しなければならないのだ」と。

その通りなのだろう。そうするべきなのだろう。

…だけど私は、人には言えないけど。

それって何だか、胸が苦しいような気がした。

いくら優秀な魔導師の卵だって、一人の人間なんだから。

たまにはゆっくり休みたいし、手を抜きたいと思うことだってあるでしょう?

土曜日だって、本当は家でのんびりしてたいし。

せめて日曜日くらいは、毎週お休みを確保してくれれば良いのに。…って。

だけど、こんな風に考えちゃいけないんだって。

何度も言い聞かされているから、私はもう、何も言わなかった。

ただ、心の中でそう思うだけ。

神様に助けてもらった、って思っているのもそう。

お母さんは理解してくれなかった。神様なんて馬鹿なこと言わないの、って。

お父さんにしても…話は聞いてくれたけど、私の意見に賛同していないことは分かっていた。

魔導万能主義の現代社会において、神様の存在を語ることそのものが、間違っているのだ。

でも…私は、覚えている。

死にかけていた私を、生きることを諦めかけていた私を連れ戻してくれた、あの優しい声、優しい手の温もりを。

あれは神様のくれた優しさじゃないなんて、どうしてそう思い込めるだろう。

誰が何と言ったとしても、私はあの手の温もりを信じたい。

…そう、考えていた私のもとに。




「ベルルシアちゃん?どうしたの?」

「えっ?」

私の前の席に座っているクラスメイトの女子生徒が、不思議そうに話しかけてきた。

「何だか、深刻な顔をしてるから…」

「あ、いや…それは…。…神様のことを…」

「え、神様?」

びっくりして、両目を見開くクラスメイト。

しまった、つい。

「う、ううん…。何でもない」

「ベルルシアちゃんって、変わったことを考えるんだね…」

「…」

神様のことを考えると、変わったことを考えてると思われるの?

「…本当に何でもないんだよ。ありがとう」

「そう?…それなら良いけど…」

「…」

「あ、それよりベルルシアちゃん。今日の宿題、やってきた?」

え、宿題?