神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…その後、ベリグリーデに詳しく説明を求めると。

曰くベリクリーデは、俺のように人の役に立つことをしよう、と思い。

あれこれ考えた結果、隊舎の食堂に向かったらしい。

「今日の晩ご飯、作るの手伝ってあげようと思って」とのこと。

…何故そんな発想になるんだ?

で、食堂の厨房に顔を出して、「今日の晩ご飯はなぁに?」とコックさんに聞くと。

「今日は焼き鳥ですよ」と言われたらしい。

成程。この辺から話が見えてきた。

焼き鳥美味しいよな。

酒のつまみってイメージが強いけど、普通に夕食のメニューにしてもアリ。

タレでも美味しいし、塩でも美味しい。

醤油味も美味しいよな。

俺的には、塩ダレに、レモンをちょっと絞って食べるのが一番好き。

更に焼き鳥の材料も、定番の鶏ももから、レバー、つくねなど、種類も豊富。

非常に満足度の高いメニューである。

って、俺の好みなんてどうでも良い。

今日のメニューは焼き鳥、と聞いたベリクリーデは、焼き鳥作りを手伝おうと決意。

「そっかー。じゃ、おこめちょうだい」

「は?お、お米…?」

「うん。手のひらの分だけちょうだい」

「…??」

首を傾げるコックさんは、ベリクリーデに頼まれるままに、一握りの生米をくれた。

まさかコックさんも、この米が鳥の餌用だとは思ってなかったろうな。

で、ベリグリーデは善意100%で、夕食の焼き鳥に使う鳥を捕まえに来た。

裏庭に米を撒いて、鳥の捕獲を試みた訳だ。

そのせいで、裏門を通って帰って来た隊員達が、ベリクリーデの捕虫網の餌食に。

更に、ベリクリーデの足元にある虫かご。

その中には、恐怖の悲鳴を上げる数匹のすずめが。

ピーピー鳴く姿が、非常に痛ましい。

「見て見てー、ジュリス。このすずめ、羽を毟って丸焼きにしたらおいし、」

「放してあげなさい!」

俺は虫かごを鷲掴みにして、蓋を開けた。

閉じ込められていた哀れなすずめ達が、一目散に飛び立っていった。

危ないところだったな。元気に生きろよ。

「あぁっ、ジュリス酷い〜!」

何が酷い、だ。すずめを丸焼きにしようとしたお前の方が酷いだろ。

「美味しい焼き鳥、ジュリスに食べてもらおうと思ったのに」

「駄目だ。お前はいい加減、食べ物を現地調達しようとするのをやめろ!」

スーパーで買ってきなさい。便利な世の中なんだから。

こいつアホだからな。「バナナジュースが飲みたいな」ってぼやいたら、自分でバナナを栽培する段階から始めようとするから。

そのやる気と意気込みは認めるけども。でもアホだ。アホの子だ。

「良いか。役に立ちたいなら、奇想天外なことをして皆を困らせるんじゃな、」

「ジュリスに…焼き鳥…」

「はぁ?」

「美味しい焼き鳥…ジュリスにも…皆にも食べて欲しかったのに…」

「…」

しゅーん、と落ち込むベリグリーデ。

…なんか、俺がいじめたみたいになってね?