神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「…お前、何のつもりだ?」

「ジュリス・レティーナ。俺と戦ってくれ」

「は…?」

…どういうことだ?

「お前が、ベリクリーデ・イシュテアの騎士足り得るかを、見極めさせてもらう」

「…」

何を言い出すかと思いきや。

カブトムシの喧嘩じゃねぇんだぞ。

「…なんか勘違いしてるようだが、俺は別に、ベリクリーデの騎士に立候補した覚えはないぞ」

そんなつもりはない。

騎士なんて言い方じゃ、まるでベリクリーデが主君で、俺がその従者みたいじゃないか。

冗談じゃない。

「俺とベリクリーデは対等だ。どっちが上でも、どっちが下でもない」

お前とベリクリーデが、どういう関係だったのか知らないが。

その関係を、俺に持ち込むんじゃねぇ。

「そうか。…それは分かっている」

「で、それでも俺と戦いたいってのか?」

「あぁ、そうだ。…お前の器を見極めさせてくれ」

…だってさ。

俺の器…ねぇ。

「アホくさ…。そんなことに一体何の意味があるんだ?」

「お前にとっては無意味だろう。だが、俺にとっては大きな意味があることだ」

「…ふーん」

そんな戯言に付き合ってやる義理はない、と言いたいところだが。

かと言って、臆病にも逃げ出そうとしている、と思われても癪だからな。

「…良いぜ。相手してやるよ」

人間様も意外とやる時はやるってことを、天使様に教えてやるよ。