神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

大人しく食ってるなと思ってたら。

ベリクリーデは、未だにツナコーン軍艦を、はむはむと齧っていた。

その数、既に7皿分。

「…ベリクリーデ。もしかして…このお皿、全部ツナコーンだったのか?」

「うん、そうだよ」

…この、馬鹿ちんは。

「お前馬鹿か?一体何皿ツナコーン食べたら気が済むんだよ…!?」

ツナコーンガチ勢かよ。

レーンに回ってるツナコーン軍艦、ベリクリーデが全部制覇してるんじゃねぇの?

つーか、寿司を握ってる店員さんも、やたらとツナコーンが売れるから、そればっかり作ってる可能性大。

「ふぇ?だって美味しいもん」

良かったな。気に入った寿司ネタがあって。

でも、そういうことじゃねーから。

「…良いかベリクリーデ。ほら、見てみろ」

俺は、テーブル席に備え付けられていたメニュー表を、ベリクリーデの前に広げてみせた。

「これだけたくさんのメニューがあるんだよ。ほら、いっぱいあるだろ?」

「凄いね」

「だろ?だから、色んな種類を食べれば良いんだよ。…サーモンとか、エビとかあるぞ。どうだ?」

メニュー表を指差しながら尋ねたが、ベリクリーデは、こてん、と首を傾げていた。

…いまいちピンと来ないか?

「じゃあ…。…お、ローストビーフなんてのもあるぞ。ハンバーグも」

すげーな。肉類も豊富じゃん。

俺も当分回転寿司なんてきたことなかったから、あまりのメニューの豊富さに驚いている。

「それから…。フライドポテト、唐揚げ…海老天まである」

海老天はともかく、フライドポテトと唐揚げって。

ファミレスかな?

この際、ベリクリーデがツナコーン以外のメニューを食べるなら、フライドポテトでも何でも良いよ。

折角回転寿司屋に来たのに、食べたのがツナコーン軍艦だけなんて、切な過ぎる。

「それに…デザート類も豊富だな。フォンダンショコラって、マジかよ…」

アイスクリームや杏仁豆腐はまだ分かる。が、フォンダンショコラって。

喫茶店かな?

シルナ・エインリーが喜びそうだよ。

「ほら。ベリクリーデ、こんなにたくさん種類があるんだぞ。どれでも好きなのを食べ、」

「んーとねー…。…じゃあ、またツナコーン食べたい」

…頑な。

そんなに…そんなに美味いか?ツナコーン。美味いけども。

「余程お気に入りだな、姫。…お、また回ってきたぞ」

「やったー。ありがとうクロティルダ」

で、またクロティルダが甘やかして、回ってきたそばから、ツナコーン軍艦を取ってベリクリーデに与えるものだから。

余計、他のものを食べようとしない。

…ごめんな。お客の皆さん。

ベリクリーデの他にも、ツナコーン軍艦を食べたかった人もいるかもしれないのに。

ベリクリーデが独占しちゃってる。

ツナコーン軍艦、回って来ないな…って思ってるだろうな。

本当申し訳ない。

そして俺は、今後一切、ベリクリーデを回転寿司には連れてこないことを誓ったのだった。