神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺は、ハマチから始まり、真鯛、ウナギ、まぐろ、つぶ貝。

それから鯛のアラ汁と、茶碗蒸しを食べた。

ついつい、あれもこれもと食べてしまう。誘惑が多い。

つい一人で回転寿司に夢中になっていたが、ベリクリーデとクロティルダはどんな様子だろう。

二人の方を見ると。

「これ美味しいね」

「ほら、姫。また来たぞ」

「ありがとう」

ベリクリーデの前には、一番お安い緑皿がうず高く積み重なっていた。

おいおい。俺が奢るからって遠慮してるのか?

そんな露骨に、一番安い寿司ばかり食べなくても。

俺の財布を心配してくれているのだろうか。

別に、そんな心配しなくても良いぞ。

何なら、紫皿を頼んでもらっても構わない。

しかし、クロティルダはレーンを回る緑皿を手に取っては、ベリクリーデの前に置いた。

「また回ってきた」

「ありがとう」

…おい。ベリクリーデに選ばせてやれって。

クロティルダは寿司を取る担当、ベリクリーデは食べる担当、みたいになってる。

お世話係かよ。

「おい、クロティルダ」

「どうした?」

さすがに口を挟ませてもらうぞ。

「ベリクリーデの世話ばっかしてないで、お前も食べろよ」

「いや、俺は」

「何だよ。口に合わなかったか?」

庶民の食べ物なんて、お天使様の口には合わないか?

「そうじゃない。ただ、俺には空腹感も満腹感もないから、際限なく食べていたらキリがないというだけだ」

「…あ、そう…」

おやつ感覚で、ちょっと摘むだけで良い、って訳ね。

…それはそれで、なんかムカつくな。

満足するまで食べれば良いじゃん。俺に遠慮してんのか?

「お前に遠慮されるとムカつくから、食べたいもの食べろよ」

「…。…良いのか?」

「良いに決まってるだろ」

お前に、俺の財布を心配される筋合いないっての。

「そうか…。…それじゃあ、そこのわかめうどんをいただこう」

寿司を食えよ。

クロティルダは、レーンを回っていた蓋付きのミニわかめうどんを取って、ずるずる啜っていた。

…寿司屋でうどんを食う天使。

…何だろう。こういうところがまたムカつくんだよな。

…あぁ、もう見なかったことにしよう。

「…それよりベリクリーデ、お前も別の、」

「ほぇ?」

「…!?」

俺は、思わず両目を大きく見開いた。

その時、初めて。

ベリクリーデの前に何皿も並べられている緑皿が、全部同じ寿司ネタだということに気づいたのだ。

「ベリクリーデ、お前それ…!全部ツナコーンか…!?」

「ふぇ?うん」

こくり、と頷くベリクリーデ。

…ベリクリーデのアホさ加減に、思わず目眩がした。