神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「ふぇっ…」

消毒用と信じて、熱湯で手を洗おうとしたが。

予想以上に熱かったらしく(当たり前)、ベリクリーデはすぐに手を引っ込めた。

「大丈夫か!?」

「…熱かった…」

そりゃそうだろうよ。

「ちょっと見せてみろ」

火傷したんじゃないかと、慌ててベリクリーデの手のひらを確認した。

しかし、ベリクリーデやクロティルダみたいなアホがいるのは、お店側も想定済みだったらしく。

幸い、触っただけで火傷するほど熱いお湯ではなかったようだ。

ベリクリーデの指先は、ちょっと赤くなってはいたものの、火傷まではしていないようだった。

…ホッ。

「おい、この馬鹿天使。適当なこと言ってんじゃねぇ。これはお茶用のお湯だ」

「…お茶?」

「良いか、こうやって。湯呑みにお茶の粉を入れて…」

馬鹿二人の為に、俺は目の前で実践してみせた。

湯呑みの中に、備え付けの小さな茶匙を使って、お茶の粉を投入。

そこに、さっき消毒用だと勘違いしたお湯を注ぐ。

軽く混ぜて、完成。

アガリの出来上がり、ってな。つまんね。

「こうやって。お茶を飲む為に使うんだよ」

誰が熱湯に手を晒せと言った。そこに御手拭きがあるだろうが。

恥ずかしいったらありゃしない。

「ほぇー。ジュリス、物知りだねー」

「人類の叡智だな」

…お前らが物を知らな過ぎるんだよ。

非人類のクロティルダはまだ良いとして。ベリクリーデ、お前は人類なんだからこのくらい知っとけ。

俺はテーブル席に備え付けの小皿を人数分取って、そこに醤油を注いでやった。

いちいち説明するより、実演する方が早いだろ。

「わさびは?つけるか?」

ここの回転寿司屋は、すべてサビ抜きで提供しているそうだ。

ま、小さい子供も来るもんな。

「わさびってなーに?クロティルダ、知ってる?」

「口にしたことはないが、話には聞いている。人類が発見した刺激物の一種だ」

「ほえー。じゃあ食べてみよーっと」

…とか言って。

ベリクリーデは、小さな瓶に入ったわさびを、そのままスプーンで掬い。

それを醤油の小皿に入れるのか、と思いきや。

あろうことか。

「ぱくっ」

「あ、馬鹿っ…!」

トノサマバッタと同じノリで、そのまま口に入れてしまった。

案の定、目を白黒させるベリクリーデ。

「ほぇ〜」

「あぁ、もう…!ペッしなさい。ペッ!」

「お茶、要るか?」

てんやわんや。

何が嬉しくて。大人三人の回転寿司屋で、子供より厄介な子供のお世話をしなきゃいけないんだ。畜生。