神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

一時間後。

「…はぁ、はぁ…」

…駄目だ。疲れてきた。

一時間、休まずに草を刈り続け。

早くも、ゴミ袋が2枚ぱんぱんになっているのだが。

それでも、この広いジャングルのほんの片隅が綺麗になっているに過ぎない。

巨大なチーズを、ネズミが一口齧ったみたいなもんだ。

…これ全部刈ろうと思ったら、一体何時間、いや、何日かかるんだ…?

とてもじゃないが、終わる気がしない。

「…これは、草刈り鎌じゃもうどうにもならないな」

チェーンソーとか、草刈り機が必要だ。

「?ジュリス、どうしたの?」

手を止めた俺に反して、ベリクリーデは元気に草刈りを続けていた。

「これ以上、草刈り鎌で草刈りするのは無理だ。ちょっと、別の方法を考えよう」

「…??どっかーん、ってする?」

「おい、待て。それは短絡的だ」

この土地、後で道路に整備されるんだぞ。

破壊して良いはずがないだろ。

「草だけ。草だけを刈らなきゃいけないんだよ」

「そっかー。…じゃあ…そうだ、ジュリスの剣で斬るのはどう?」

『魔剣ティルフィング』のことか?

魔剣を…草刈りなんて用途の為に…。

いくら国民の皆様の為とはいえ、それはさすがに。

いや、それ以前に。

「チェーンソーじゃねぇからな、俺の剣…。草刈り鎌と大して効率変わらないと思うぞ」

むしろ、草刈り鎌より刀身が大きいせいで、逆にやりづらくないか?

「うーん…。それじゃ、どうしよう?」

「そうだな…。…悩んでても仕方ない。ホームセンターに戻って、草刈り機を、」

「よし。こんな時はクロティルダを呼んでみよう。クロティルダー。クロッティ〜」

「あ!おまっ…!」

…やりやがった、と思った時には、もう遅かった。

「俺を呼んだか。我が姫」

…来ちゃった。

こいつ…。相変わらず、ベリクリーデのストーカーしてやがるのか。

「…」

草ぼうぼうの空き地の前に、たたずむ天使。

…これまたシュールな光景である。

しかし、ベリクリーデも、当のクロティルダも、そんなことはまったく気づいていないようで。

「あのね、クロティルダ。私とジュリス、二人で草取りしてたの」

「知ってる。見てたからな」

「でも、二人じゃなかなか終わらないの。クロティルダ、手伝ってくれる?」

「…ふむ、成程」

と言って、クロティルダは広々とした空き地に鬱蒼と生えた、根の深い雑草達をじっと見つめた。

「与えるのは得意でも、奪うのは不得手なんだが…。しかし、出来ない訳ではない」

クロティルダの手に、見覚えのない武器が握られていた。

突然現れたものだから、さすがに驚いた。

銀色の剣である。

刀身は、俺の持つ『魔剣ティルフィング』とほぼ同じくらい。

だけど、あの剣に刻まれた切り込みは…。

「わー。クロティルダ、頑張れー」

声援を送るベリクリーデである。

クロティルダは、くるりと俺の方を向いた。

「悪いが、少し離れててくれ」

「お、おぉ…」

俺はベリクリーデを背中に隠して、一歩、二歩と後ずさった。