神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…で、現場に到着したのだが。

そこに広がっていた光景を見て、思わず絶句してしまった。

「…こりゃまた凄いな…」

「わー。草ぼうぼうだ」

ごめん。俺、草刈りのこと舐めてたよ。

お庭の草むしりとは訳が違う。

本当に、長いこと放置されていたらしく。

俺の背丈くらいの雑草が、鬱蒼と生い茂っている。

…さながらジャングルだな。

それがまた、広いんだわ。

新築の家が軽く10軒くらいは建ちそうな、広い土地なんだ。

で、その広い土地一帯がジャングルと化してる。

…これは、草刈り鎌でどうにかなる規模じゃないぞ。

「よいしょー。よいしょー」

それなのに、ベリクリーデは俺のように絶望することはなく。

千里の道も一歩からと言わんばかりに、早速しゃがみ込んで、草を掴んで引っ張っていた。

勇気あるな、お前。

しかし。

「いてっ」

「あ」

案の定。

あまりにも大きく、根強く、おまけに鋭い雑草を、素手で掴んで引っ張ったものだから。

ベリクリーデは、手のひらを切ってしまったようだ。

「手、切れちゃった…」

涙目。

あぁ…まったく言わんこっちゃない。

「素手でやるな。軍手買ってきたんだから、軍手を嵌めろ」

俺は、ベリクリーデの手のひらに絆創膏を貼ってやりながら言った。

草って、たかが草の癖に、時に刃物のように鋭い葉を持つものがあるからな。

迂闊に引っこ抜こうとすると、こっちが怪我をする。

ベリクリーデだけに任せる訳にはいかない。

「…仕方ない。やるか…」

ちょっとずつでも、進まなきゃ永遠に終わらないからな。

俺も軍手を嵌め、草刈り鎌を使って、ざっくざっくと草を刈り始めた。

…何やってんだろうな。俺達。

これが天下の聖魔騎士団魔導部隊の姿かと思うと、なんか涙が出てくるよ。

しかも、予想以上に草が太く頑丈で、新品の草刈り鎌でもなかなか切れない。

畜生…これは厄介だぞ。

「あ、バッタがいる」

ベリクリーデが、草刈りの途中でバッタを発見。

恐らくこの敷地内には、バッタの他、様々な昆虫が住み着いていることだろう。

「ひょいっ」

ベリクリーデは、そのバッタを捕獲した。

「ジュリス、見てー」

「あぁ、トノサマバッタだな…」

「ぱくっ」

「食うなよ!」

咄嗟に止めたが、遅かった。

ベリクリーデはワイルドに、ナマの、生きているトノサマバッタを口に入れ。

バリバリボリボリと、スナック感覚で食べてしまった。

…うわぁ…。

女の子相手に、うわぁとか思ってごめんな。

でも、うわぁ…。

「じゅ〜り〜す〜♪何故なくのー♪」

そうだというのに、ベリクリーデは草を刈りながら、呑気に歌っている。

「ジュリスの勝手でしょー♪」

「…カラスじゃねぇんだよ、俺は…」

その変な替え歌やめろ。

俺もお前くらい呑気になりたいもんだよ。