神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

好奇心いっぱいのベリクリーデは、心行くまで浜辺を満喫していた。

砂浜で遊ぶことに飽きると、今度は波打ち際まで行って。

打ち寄せる波に、足を浸けてキャッキャしていた。

でっかい子供だなぁ。

ベリクリーデは波打ち際にしゃがみ、指を水の中に浸けて、ぺろっと舐めた。

「わー。しょっぱい」

「そうか」

そりゃ海水だからな。しょっぱいよ。

あと、海水ってそんなに綺麗なものじゃないから。あんまりぺろぺろするんじゃないぞ。

「ねぇ、ジュリス。ジュリスは何で海の水がしょっぱいのか知ってる?」

え?

唐突な、ベリクリーデの質問タイム。

「それは…お前、大昔の大陸に含まれていたナトリウムが、」

「あのね、神様が昔、お料理する時に、うっかりお塩の容器を落っことしちゃったからなんだよ」

「…」

「それが地上の海の中に落っこちて、それでしょっぱくなったの。だから神様は今でも、料理にお塩が使えないんだよ」

…だってさ。

もうそういうことにしておこうぜ。

「どうせなら、お砂糖を落としてくれれば良かったのにね」

「そうだな…」

そうしたら今頃、海水はしょっぱくなくて、むしろ甘かったかもな。

それはそれで、優しい世界。

「よーし。砂でお城作ろーっと」

「ちょっと待て、ベリクリーデ」

「ほぇ?」

海を満喫するのも良いが、その前に。

「弁当、先に食べようぜ」

「…!そうだ。ジュリスのキャラ弁!」

ベリクリーデは、しゅばっ、と反応した。

お、おぉ。

「早く食べたい」

「ちょっと待て、ビニールシートを敷いて、それからお手拭きで手を…」

「お弁当箱〜」

「こらっ。お行儀悪いぞ」

急かすんじゃない。ちゃんと出すから。

俺は、持参したビニールシートを砂浜に敷き。

そこに靴を脱いで腰を降ろしてから、まずは御手拭きを取り出した。

「はい、これで手を拭いて」

「ふきふき」

よろしい。

それから、水筒に入れて持ってきたお茶を出す。

そしてついに…。

「ほら、お弁当だ」

「わくわく…」

好奇心いっぱいの顔。無邪気なもんだ。

ベリクリーデの前で、ぱかっ、と弁当箱の蓋を開けると…。

「…わ〜…!」

…この反応。

まるで、クリスマスの翌日に、プレゼントを開ける子供のようだな。