神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺はその後、近所のスーパーに行って、必要なものを揃えた。

で、生きてるカエルを持って、俺は魔導隊舎の調理室に向かった。

…虫かごの中で、カエルが窮屈そうにぴょこぴょこしている。

…うぇ。

改めて、これを調理すると思うと…。…なかなか勇気が要るな。

クロティルダのヤツ…気が利かないな。どうせなら、皮を剥いで、生肉状態にしてから渡してくれれば良いものを…。

…いや待て、目の前でカエルの皮を剥がれても、それはそれで気持ち悪いから、やっぱりやめとこう。

「…よし、やるぞ」

自分にそう言い聞かせてから、俺はまず、ゴム手袋を二重に、両手に装着した。

そして、虫かごの蓋を開け。

ガシッ、とカエルを掴んだ。

離せコラ、とばかりにじたばたするカエル。

うへぁ。

ゴム手袋越しにも伝わってくる。カエル独特のヌメヌメ感。

俺は片手にカエルを、片手に包丁を手に、大きく深呼吸をした。

「はー…。ふー…。よし、やるぞ…やるぞ…」

カエルをまな板に押し付け、包丁を振り上げた、その時。



「ちわーっす、ジュリス。ジュリス宛てに荷物、ってギャァァァァァ!!」

「うわっ!何だよ!?」

突然の大声に、俺はカエルを掴んだまま振り返った。

そこには、腰を抜かしたキュレムと、何やらB5サイズの封筒を持ったルイーシュがいた。

「大変だぞルイーシュ!ジュリスが!ジュリスがついに…!トチ狂って、罪なきカエルを殺戮しようとしてる!」

はぁっ!?

「いえ、これはきっと儀式の生贄に捧げようとしてるんですよ。憎き天使に復讐する為に、動物の血を捧げて黒魔術を…」

「ギャァァァァこぇぇぇぇ!」

…こいつら、何を言ってんだよ。

とにかく、凄まじい誤解をしていることだけは確かだ。

「ちょっと待て、落ち着け。俺は何も黒魔術の準備をしてる訳じゃ、」

「ジュリス、あのな。確かに世の中には理不尽なことがある。大事な今カノを、元カレに寝盗られてしまう悲しいこともあるさ」

ぽん、とキュレムは俺の肩に手を置いて、優しく言った。

…は?

「でもな、ヤケになっちゃあいけない。どしたん話聞こか?」

「…別にどうもしてねぇけど」

「って言うかそのカエル、とんでもない色なんですけど。何処から連れてきたんですか?」

「いや、これは…クロティルダに…」

「クロティルダ…?ってことは、やっぱ呪いの儀式用!?」

「…ちげーよ」

お前ら、とんでもないタイミングで入ってきやがって。

お陰で俺は、事の経緯をキュレムとルイーシュに、イチから説明する羽目になった。