神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「あぁ…。ちょっとな…」

はぁ、と溜め息をつく俺。

「そうか。…何に悩んでるんだ?俺で良ければ相談に乗ろう」

それは有り難い申し出。

「いや…ベリクリーデがさ、キャラ弁作って欲しいって言ってたじゃん?」

「あぁ。言ってたな」

「どうせなら、好きなおかずを入れてやろうと思って、弁当に何を入れて欲しいか聞いたら…カエルだってさ」

「…カエル…。両生類のカエルのことか?」

「そう、それ。ゲロゲロ言うカエル」

「そうか…。我が姫は、カエルが好きなのか」

好きなのかねぇ。

それとも、単に昔食べたカエルの味を思い出して、「懐かしの味をもう一回食べたい!」と思っただけなのか…。

どっちでも良いが、俺にとっては非常に高いハードルだ。

「調理するのは別に良いんだけどさ…。食用のカエル肉なんて、そうそう手に入らないだろ?」

「そうなのか?」

「そこら辺のスーパーには売ってねぇよ」

見たことあるか?カエル肉。

仮に売ってたとしても、ルーデュニア聖王国には、カエル食の文化がないからな。

みんな気味悪がって、誰も買わないだろ。

豚肉のレシピ、鶏肉のレシピ、はたくさんあるけど。

カエル肉のレシピ、なんて見たことある?

俺はない。

「だから、どうやって手に入れようかと思って…」

「それで悩んでたのか」

「あぁ…」

やっぱり、時間がかかっても、お取り寄せするしかないのかな…。

ベリクリーデには、かなり待ってもらわなゃいけなくなるが…。

…すると。

「そういうことなら、俺が一肌脱ぐとしよう」

「え?」

「冥界に、メイカイガマガマガエルという品種がいる。あれは毒もなく、食用にもなる」 

マジ?そんなのいるの?

「あれを捕まえてくるとしよう。少し待っていてくれ」

「お、おぉ…」

俺が返事をするなり。

「そいつ」は、冥界に繋がる『門』を開いた。

時空の裂け目のようなその場所に、何の躊躇いもなく、スッと入っていった。

…行ってしまった。

その後ろ姿を見て、俺はようやく、肝心なことに気づいた。

…ん?

…俺、今、友達みたいに当たり前のように話してたけど。

…今のって、クロティルダじゃね?

ベリクリーデのもとにやって来た、あの腹立たしい天使…。

で、その天使が今、なんて言ってた?

…冥界に、カエル捕りに行くって…。

「…はぁぁぁ!?」

俺は、無意識に相槌を打っていた自分に絶叫した。

馬鹿か俺は。何普通に喋ってんだよ…!?

あいつもあいつで、旧知の仲みたいに接してくるなよ!

馴れ馴れしいにも程がある。

大体、俺はあいつのこと認めてな、

「戻ったぞ」

「はやっ!?」

一瞬で、あっという間にクロティルダが帰還した。