神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「さぁ、次の質問。何かあるか?」

「…あの、それじゃ一つ良いですか?」

次に挙手したのは、唯一の女の子のチノミちゃん。

おぉ、何でもどうぞ。

「聖魔騎士団の魔導師として、身につけておくべき心構えとか…。心得、みたいなものはありますか?」

…また抽象的な質問が来たな。

「君、真面目か?」

「え?」

「そんな真面目なこと、考えてたら疲れるぞ?適度に力抜かないと」

それが人生のコツである。

「まぁ、ルイーシュほど力抜くのは駄目だけども」

「ちょっと。俺に対する風評被害じゃないですか」

だまらっしゃい、ルイーシュ。

事実だろ。

「でも、君が聖魔騎士団魔導師の心得を知りたいなら、特別に教えてやらんこともない」

こう見えて、俺も先輩だからな。

それに、シュニィに後輩達の指導を頼まれたから。

ちゃんと新人研修の監督として、為になることを教えてやろう。

「本当ですか?…是非教えてください」

よし、良いだろう。

「良いか。この聖魔騎士団で覚えておくべきことは、大きく分けて3つある」

「3つ、ですか?」

「そうだ」

この3つだけ、覚えておけば良い。

「まず1つ目。…この聖魔騎士団で、絶対にシュニィちゃんの悪口を言わないこと」

「…はい?」

ぽかんとする、新人6人一同。

ルイーシュは俺の隣で、深々と頷いていた。

良いか、絶対やめとけよ。

シュニィの悪口を言ったら…翌日の日は拝めないぞ。

「シュニィ隊長…?」

「あの優しそうな方が…?」

困惑を浮かべる一同。

そうだな。シュニィは確かに優しい。

仮に目の前で悪口を言われても、シュニィなら、きっと怒らずに、笑って許してくれるだろう。

…だが、それはシュニィだけだ。

シュニィが許しても、絶対に許さない男がいる。

「聖魔騎士団団長に、地の果てまで追いかけられたくなかったら…絶対やめとけ」

「あの人、何処で聞いてるか分かりませんからねぇ。誰もいないと思ってても油断しちゃ駄目ですよ。シュニィさんの話だと、地獄耳になりますから」

と、補足するルイーシュ。

その通り。

恐ろしい目に遭いたくなかったら、シュニィの悪口を言うのはやめておけ。

「よ、よく分かりませんけど…。…分かりました。絶対言いません…」

そう。それで良い。

「次、2つ目。…この聖魔騎士団で、ベリクリーデちゃんの悪口を言わないこと」

「…はい?」

シュニィちゃんの悪口は、絶対駄目。

そして同時に、同じくらい恐ろしいこと。

それは、ベリクリーデちゃんの悪口を言うことだ。

これがどれくらい危険かと言うと、月曜日の朝に通学カバンの底から、洗ってない弁当箱を見つけた時くらい危険。

いや…それ以上だ。

「え、えぇと…そのベリクリーデさんという方は…」

「君達はまだ会ったことないか。俺やシュニィちゃんと同じ、聖魔騎士団の魔導部隊大隊長だ」

「そうなんですね…。…その人、怒らせると怖いんですか…?」

もしかして、イーニシュフェルト魔導学院のイレースちゃんみたいな人なんじゃないかと。

新人達は、怯えた表情を見せたが。

…いいや、それは違う。