神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「知ってる?『パリナイ★ゴールデンチャンネル』って。あれ、俺なんだよね」

ドヤ顔。

知らねーし。見ねーし。どうでも良いし。

何だ?その小学生が考えたみたいなチャンネル名は。

「ほらこれ、全部俺の動画」

とか言って、わざわざ電子機器を持ってきて、自分のチャンネルを見せてきた。

動画のサムネイルには、金髪サングラスのチャラ男がおどけている様子が映し出されていた。

あー、はいはい。そういうことやってんのね。

ところであんたのチャンネル、登録者数、二桁も行ってないんだけど?やめたら?

「毎晩生配信もやってんの。良かったら見に来てよ」

「そ、そうっすか…」

「あ、そうだ。これ今考えてる新しい企画なんだけどさぁ。良かったら忌憚なき意見を…」

ごめん。その話長くなりそう?

「あの、すみませんけど、今は時間がないんで…次の機会に」

「えぇー?良いじゃんちょっとくらい」

そういう訳にはいかないんだよ。

こっちは一応、仕事中なんだからさ。

「あ、そうだ。特別ゲストとして出演させてあげてもい、」

「あーはいはい光栄です。機会があればまた」

俺は強引に、無理矢理話を終わらせた。

冗談じゃない。誰が出演するか。

ばたん、と玄関のドアを閉めて、はー、と溜め息。

「愉快な人だったね」

ベリクリーデは、目をキラキラさせていた。

あれを「愉快」と表現出来る懐の広さに脱帽だよ。

正直、もう203号室の住人とは関わり合いになりたくない。

畜生…。204号室の心霊現象のことについて、探りを入れようと思ってたのに…。

とてもじゃないけど、そんなこと出来る雰囲気じゃなかった…。

…しかし、諦めるにはまだ早い。

さっきの金髪ユアチューバーが駄目なら。

「よし、隣だ…。ベリクリーデ、202号室に行こう」

「そこにも誰か住んでるの?」

「一応…。2階の部屋は全部埋まってるらしい」

俺は202号室のチャイムを鳴らしてみた。

ブー、と音がしたが。

「…出てこないね」

「出てこないな…」

この部屋も住人も留守か?

試しに、もう一回ピンポンしてみたが。

やっぱり、誰も出てこない。

「…駄目だ、今は留守みたいだな。じゃあ隣に…」

と、諦めて玄関の前から立ち去ろうとした、その時。

202号室の玄関のドアを、どんっ、と内側から蹴り上げる音がした。

俺もベリクリーデも、思わずびくっ、とした。

すると。

「うるせーんだよ!入ってくんなババァ!」

部屋の内側から、野太い怒鳴り声が聞こえてきた。

「…!?」

「…ばばー?」

ベリクリーデ、きょとん。

ちょっと待て。誰だよババアって?

つーか、部屋の中、人いるのか?だったら出てこいよ。

ともあれ、在宅中ならチャンスだ。

引越しの挨拶にかこつけて、204号室の情報を聞けるかもしれない。