神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

一時間後。

俺とルイーシュは、連日新人研修が行われているという、第2会議室に向かった。

そこには、研修に参加する為にやって来た、新人魔導師6人が待っていた。

「よーし…よく来たな新兵共!歓迎してやる!」

俺は居丈高に、新人達にそう叫んだ。

「全体、気をつけー…。前ならえ!」

「…」

俺が号令を出しているというのに、ぽかんとする新人達。

おい。上司の指示には従うもんだろ。

「キュレムさん。体育の授業じゃないんですから…」

と、呆れ口調で横から口を挟むルイーシュ。

「何を甘っちょろいことを。こういうのは最初が肝心なんだよ。シャバの空気が抜けきってない甘えたヒヨッコ共に、社畜精神を植え付ける為にだな?」

「うわー…。ブラック企業の上司みたいなこと言ってる」

だまらっしゃい。

「…ってな訳で…。まずは先輩から、厳しい社会の洗礼を受けてもらおうじゃないか」

「ふーん…。具体的には、何をするんですか?」

えっ?

…そこまで考えてなかった。

洗礼…。新人の洗礼…。

「…えーと…。…一緒に牛丼食べに行ったり、とか?」

「…ただの食事会じゃないですか」

…。ずこーっ。

…という、俺とルイーシュのやり取りを。

「…」

新人達6人は、一言も発さず、口をぽかんと開けて眺めていた。

…この人達、何やってんだ?とでも思ってそうな顔だな。

畜生…。ここは先輩として、上司として、格の違いってものを見せてやろうと思ったのに。

なんか、初っ端から思いっきり、色々なことを色々と間違えてる気がする。

「…あの、ごめん。謝るから。その怪しげな人を見る目はやめてくれ」

「え、あ、はい。いえっ、その…」

戸惑う新人。

「…あの…シュニィ隊長はどちらに…?」

新人の一人が、おずおずと尋ねてきた。

意味不明なおめーらじゃなくて、シュニィを出せ、と。そういうことだな?

「シュニィさんは今日、急にお休みを取られたんですよ」

ルイーシュが、その質問に答えた。

「え、お休み…?」

「のっぴきならない家庭の事情だそうです」

アイナちゃんが熱出しちゃったんだから、これはもう、のっぴきならない事情だよな。

「そこで、今日の皆さんの研修の監督を、我々が頼まれたという訳です」

「…!ということは、お二人共…」

「…一応、聖魔騎士団魔導部隊の大隊長だよ」

俺は、大隊長であることを示す腕章を、彼らに見せた。

すると途端に、新人達は目を見開いた。

…分かるよ。

「え?こんな不審者みたいな人達が、大隊長やってんの?」と思ったんだろう?

…やってんだよ。これが。

「そ、そうだったんですね…」

「その…そうとも知らず、挨拶が遅れてしまって…」

「申し訳ありません…」

目の前にいる俺とルイーシュが、どうやら偉い立場にあることを知り。

次々に、謝罪の言葉を口にする新人達。

あー。やだやだ。

「いいから。そういう堅苦しいのは苦手なんだよ」

もっと気楽に…ちょっとチャラい後輩みたいに、「○○っすよね〜」みたいな喋り方でいいぞ。

確かに大隊長やってるけど、俺もルイーシュも、そんな御大層な身分じゃないから。