神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ベリクリーデは、クロティルダと一緒に土いじりに夢中だし。

一方の、キュレムとルイーシュは。

「うっはぁ〜!めっちゃ広!これって実物大?マジのこーしえん球場と同じ広さなの?」

「勿論です。完全再現ですよ」

「すげぇぇ!!」

「便利ですね、このメガネ。別の場所も再現出来るんですか?」

「はい、お任せください。こーしえん球場のみならず、砂漠のピラミッドでも、深海の底でも、某ネズミ遊園地でも、冥界でも、好きな場所を再現することが出来ます」

「へぇ。家の中で世界旅行が楽しめるんですね」

メガネ開発者のリューイと、何やら親しげに話していた。

…楽しそうで何より。

あのなぁ…。お前ら、無邪気に楽しむのは結構だが…。

こいつ…リューイは、天使なんだからな。

俺はまだ、天使という種族を完全に信用してはいないぞ。

何せ、天使共はベリクリーデを狙っていたんだからな。

クロティルダのことは、百歩譲って信用してやらんこともない。

が、他の天使となれば、話は別だ。

こうやって油断させておいてから、後ろから…ってことも考えられる。

こんなふざけたぐるぐるメガネで、俺やベリクリーデやキュレム達を騙そうったって…そうは行かないぞ。

「ったく…危機感のない奴らだ」

呟きながら、俺はVRぐるぐるメガネを外した。

メガネを外すと、途端に、こーしえん球場から、見慣れた聖魔騎士団隊舎に戻った。

すると、そこに。

「えっ…」

「…」

VR空間にいたせいで、全然気づかなかったが。

いつの間にか、そこに、通りすがりのシュニィが立っていて。

ぐるぐるメガネをかけた俺達一行を、まるで信じられないものでも見るかのように、目を見開いて見つめていた。

その眼差しは、変質者を見るそれだった。

それもそのはず。

ハタから見れば俺達は、ぐるぐるメガネをかけてはしゃいでいる、奇妙な集団以外の何物でもない。

「ちょ、シュニィ。これはちがっ…!」

誤解だ。これは。誤解なんだ。

しかし、シュニィは呆然とこちらを見つめ。

「…だ、大丈夫ですか…?」

震える声で、そう問いかけてきた。

…大丈夫だよ。

別に、ぐるぐるメガネに興奮する不審しゃねーから。

「違うんだ…シュニィ。これは…」

必死に、弁解しようとしたのだが。

その後ろで。

「わーい。土、いっぱい取れたよー」

「大収穫だな」

こーしえんの土を収穫し続けている、ベリクリーデとクロティルダ。

お前ら。まだ土拾ってんのか。

いくら土を集めたって、そこはVR空間なんだぞ。

本物のように見えるかもしれないが、メガネを外したら現実だ。

俺は、ベリクリーデ達がVR空間にいることを知っているが。

事情を知らないシュニィにとっては、ベリクリーデとクロティルダが部屋の隅にしゃがみ込んで、何も無い空間を漁っているようにしか見えないはずだ。

違うんだよ、あれはただ…こーしえんの土を集めてるだけなんだ。

しかも、そんな二人の横で。

「なぁ、サイレンは?サイレンとか鳴るの?」

「サイレン?」

「ほらぁ、あの、こーしえんで試合の始まりと終わりに鳴る、ぷわぁぁぁぁん!みたいなアレ」

「あぁ、分かりました。鳴らせますよ」

キュレムがせがむと、リューイはキュレムのリクエストに、すぐさま応えたらしく。

「うぉわぁぁぁ!すげぇ!初めてナマで聞いた!」

「これVRなので。ナマじゃないですよ」

「校歌!俺達の母校の校歌も流してくれ!イーニシュフェルト魔導学院の校歌!」

「母校に野球部、ないですけどね」

大興奮のキュレムと、冷静にツッコミを入れるルイーシュ。

どう見ても変人です。ありがとうございました。