神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「…」

「…」

「…」

「今日のクロティルダは、色々とツイてますね」

俺は無言、キュレムとルイーシュも無言。

リューイだけが、冷静にポツリとそう呟いた。

「…?」

クロティルダは、後頭部に手を当ててくるりと振り向いた。

…こいつ、自分の頭にボールぶつかったのに、よくこんな冷静でいられるな。

天使故の余裕なのか。

「?どうしたの、クロティルダ」

クロティルダの隣で、泥遊びに勤しんでいたベリクリーデが顔を上げた。

ベリクリーデ…。お前、全然気づいていないようだが。

お前今、さっき、割と危険なピンチを2回も切り抜けたんだぞ。

クロティルダに当たったから良かったようなものの(良くはないが)。

これがベリクリーデに当たってたら、今頃俺は、このVR世界でキュレムと殴り合いの喧嘩をしていただろう。

「いや…。先程、またしても後頭部に痛みが…」

「痛かったの?可哀想に。蝿がぶつかったのかなー」

「そうかもしれないな」

蝿じゃねーよ。軟式野球ボールだよ。

馬鹿なのかこいつは。いや馬鹿だったな。

「よしよし。痛いの痛いの飛んでけー」

「感謝する」

ベリクリーデが、よしよしとクロティルダの頭を撫でてやっていた。

「…キュレムさん。あなた、今日だけで2回、天使にボールをぶつけてますけど」

「うぐっ…。き、気の所為。気の所為だって!大丈夫だよクロッティ。これVRだから!」

「そうか」

キュレムの、必死の苦しい抵抗に、クロティルダはこくりと頷き。

…そして、何事もなかったように、ベリクリーデと共に土弄りに戻った。

俺今度からさ、腹が立ったらクロティルダの後頭部を張り倒して。

「気の所為だ、気の所為!」と言って誤魔化すことにしようかな。

バレないぞ、多分。