神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺は百貨店に行って、引っ越しの挨拶の定番、洗剤セットを部屋の数だけ購入。

それを持って、『コーポ シューティング・スター』に戻る。

「ジュリス、何処から持って行くの?」

「そりゃ、まずは…」

俺とベリクリーデの住む、204号室の両隣。

203号室と、205号室だ。

果たしてこのアパートには、どんな住人が住んでいるのか。

その住人達は、この204号室で起きた心霊現象のことを知っているのか…。

この挨拶回りは、それを確かめる為でもある。

まずは205号室の方から挨拶に行こう、としたのだが。

ブー、とチャイムを鳴らしても、

「…出てこないね」

「…あぁ。出てこないな」

一向に、住人が出てこない。

…どうやら不在のようだな。

それも、恐らく長期に渡る不在なのだろう。

ドアポストに、3、4日分の新聞がそのまま、入れっぱなしになっている。

「…仕方ない。この部屋は後回しだ。203号室に行こう」

「うん、分かったー」

なんか、初っ端から出鼻挫かれた気分だな。

気を取り直して、203号室を訪ねる。

ブー、とブザーを押して、しばらくすると。

部屋の廊下から、足音が聞こえてきた。

おっ。

ガチャッ、と玄関のドアが開けられた。

中から出てきたのは、家の中なのにサングラスをかけ、頭を金色に染めた若い男性だった。

…こいつが、隣の住人。

「ん?どちら様?」

「あ、すみません。自分、昨日から隣の…204号室に引っ越してきたジュリスと言います。ジュリス・レティーナ」

「あー。そこの部屋ね」

と、金髪兄さんは204号室の方を指差した。

「こっちが、一緒に暮らしてるベリクリーデ・イシュテア」

「よろしくねー」

おいベリクリーデ。そこは「宜しくお願いします」だろ。

そんな大学の同期みたいな軽いノリで…。

…しかし、むしろその金髪兄さんは、ベリクリーデのそんなフランクさが気に入ったらしく。

「へぇ〜、良いねぇ。若い人達が越してきてくれて嬉しいよ。君達、夫婦?」

うぐっ。その質問やめろ。

「えっと…。その、恋人です…」

俺は、小声でそう答えた。

心の中で、「嘘です!ただの同僚です!」と叫びながら。

すると金髪兄さんは、もっとテンションが上がったらしく。

「ほんと?良いなー。こんな可愛い彼女いたら、毎日楽しいでしょ」

「そ、そうっすね…」

「美男美女カップル!いやぁ羨ましいなぁー」

「…」

…何だろう。もう帰りたくなってきた。

いつの間にかタメ口だしさ…。

すると、気を良くした金髪兄さんは。

「そうだ。俺さぁ、実はユアチューバーやってるんだよね」

…自分語りが始まっちゃった。