神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

キュレムは悔しそうに、再びバットを構えた。

「畜生、絶対一球は打ってやる…!次、来い!」

「はいはい…。行くぞ」

ピッチャー、もう一度振りかぶって。

投げました。

「うぉっしゃぁぁい!」

キュレムはまた大声を出して、バットをフルスイング。

…スカッ。

俺の投げた球は、緩やかなカーブを描き。

ぱふ、という間抜けな音を立てて、キャッチャールイーシュのミットに吸い込まれた。

「今のはストライクですね」

と、審判リューイ。

おぉ、良かった。真ん中に入るようになったな。

…しかし、またしても見逃してしまったキュレムは。

「…速いっつーの!もう一回!」

「いや…。お前がいつも撃ってる魔銃の方が遥かに速いだろ…」

何でアレを見極められて、今俺が投げたコレは無理なんだよ。

意味不明だろ。どうなってんのお前の動体視力。

「もっかい!次は打てる気がするから。もっかい!まだツーストライクだろ!」

「…分かったよ。じゃあ行くぞ」

俺も何となく慣れてきたから、次もストライクを取れそうだ。

ピッチャー、振りかぶって。

第3球、投げました。

「どっせぇぇぇい!!」

キュレムは再び、渾身のフルスイング。

…スカッ。

…お前、それ…叫ぶのやめたら?

俺の投げた球は、またしてもルイーシュがキャッチした。

「リューイさん。今のは?」

「ストライクです。空振り三振でワンアウトですね」

おぉ。良かった。2回連続ストライク。

さっきのはまぐれじゃなかった、ってことが証明されたな。

…で、その一方で、3回連続空振りしてしまったキュレムは。

「…なんで当たらねぇの!?おいジュリス!」

「何だよ…」

「お前、まさか消える魔球投げてんじゃねぇだろうな!?」

「…消えてねーよ…」

ちゃんと見えてるじゃん。言いがかりはよしてくれ。

「もう一回!次は絶対当てるから!」

いや、もう一回って…。

「キュレムさん、三振したので、もうアウトですよ」

「良いじゃん、そんな細かいこと気にしなくてもさ!」

気にするだろ。野球だぞ。

空振り三振したのにバッターボックスに居座られたんじゃ、ゲームにならないだろ。

「頼むジュリス!泣きの一回!」

「…仕方ないな…」

分かったよ。投げてやるよ。

まったく。野球のルール完全無視だな。

それじゃ。

第4球。ピッチャー、振りかぶって。

投げました。

「どがっしゃぁぁ!!」

謎の奇声をあげながら、キュレムはバットをフルスイング。

ようやく、バッドに球が当たった。

しかし、前には飛ばなかった。

キュレムが打ったボールは、凄まじい勢いで真横に逸れ。

ドゴッ!!っと重い音を立てて。

…クロティルダの後頭部に激突した。

…。

…ベリクリーデに当たらなくて良かった。