神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「わーい。砂、集めよーっと」

とか言って、ベリクリーデは足元の土をかき集め始めた。

は?

そんなベリクリーデの傍らに、クロティルダが寄り添うようにしてしゃがんでいた。

おい。お前、何ちゃっかりベリクリーデの隣に。退けよ。

いや、それよりも。

「…何やってんだ、ベリクリーデ…」

「え?砂、集めてるの」

土だろ。砂場じゃないんだから。

「だってこーしえんって、砂を袋に入れて持って帰るところなんでしょ?」

「え?いや…。ちが、う…?いや、違わないけども…」

ベリクリーデは、こーしえんを何だと思ってるんだ。

大きな砂場だと思ってないか?

…そりゃ土も持って帰るが。

「…それは負けてからやれよ…」

試合もせずに、土だけ持って帰る奴があるか。

ここは野球をする場所なんだぞ。知ってるか?野球。なぁ。

それから、精密に再現しているけども、これってただのVR映像だろ?

いくらここで土を集めても、現実には持って帰れないんだぞ。

「見てー、クロティルダ」

「大収穫だな」

それなのにベリクリーデとクロティルダは、袋いっぱいに、こーしえんの土を集めてご満悦。

…あぁ。もう、好きにやってくれ。

…で、一方のキュレムとルイーシュは。

「おぉー!すげー!めっちゃリアル!ここが夢のこーしえんか〜!」

キュレムなんて、ベリクリーデに負けないくらいはしゃいでいる。

…何だ。夢だったのか?

さっき、「憧れだった」とか言ってたもんな…。

「これ、この空間は何処まで続いてるんでしょうかね?例えば、あの観客席の裏側とかも存在してるんでしょうか」

ルイーシュは空間魔導師らしく、このVR世界に興味関心を抱いているようだった。

空間魔法の専門家だからな、ルイーシュは。

「おいルイーシュ、そんな小難しいことは良いじゃないか」

「はい?」

「それより、こーしえんだぞ。ここ、こーしえん!全国の高校生球児達の、夢の舞台!」

「えぇ。まぁ…VR世界ですけどね」

「人生で、この舞台に立てる日が来るなんて…!今まで頑張ってて良かった…!」

…なんか感動してるところ悪いけど。

ここ、現実じゃないからな。

「生まれてこの方、グローブさえまともに握ったことのない人が何か言ってますよ。ジュリスさん」

「そっとしといてやれよ…」

夢を見るだけなら自由だから。

ただの再現映像とはいえ、「それっぽさ」を味わわせてやってくれよ。