神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

悲報。

俺の相棒と同僚二人とその他(天使)が、揃ってぐるぐるメガネを装着している。

俺は一体どうしたら良いんだ?

「魔剣使いの魔導師殿もどうぞ」

リューイは、再び何もない空間から、ぐるぐるメガネを取り出し。

それを、俺に差し出してきた。

…俺にもかけろと?

冗談だろ。

「ほぇー。こーしえんだ。ここ、こーしえんだ〜!」

ぐるぐるメガネをかけたベリクリーデは、興奮した様子ではしゃいでいる。

…一体何が見えてるんだろう?

畜生。絶対怪しいことこの上ないのが分かってるのに。

ベリクリーデが何を見ているのか分からない以上。

俺も、そのクソメガネをかけない訳にはいかないじゃないか。

「…ちっ、それ寄越せ」

「どうぞ」

俺は、リューイに手渡された、ふざけたぐるぐるメガネを装着した。

言っとくが、イヤイヤだからな。

一体何なんだこのメガネ。一体何が見えていると…。

「お…。おぉ…?」

ぐるぐるメガネを装着した俺は、思わずそんな変な声が出てしまった。

…すげぇ。本当に…こーしえんだ。

あの、全国の野球少年達の夢の舞台だぞ。

広いグラウンド。満員の観客席。

照りつける太陽の日差しさえ、まるで本物のように感じる。

これ…。

「どうなってるんだ?このメガネは…?」

「先程も説明した通り、高性能人間生活再現VRメガネです」

「うぉっ…」

審判員の格好をしたリューイが、俺の目の前に現れた。

すげーな。このリューイもVRで再現してあるのか?

「何でこんなものを…」

「私の主であるケルビム様は、人間の生活を観察し、人間の文化や生態を理解することに重きを置いておられます」

と、リューイが説明した。

「ならば観察するだけではなく、実際に体験した方が、より多くの知見を得られると考え…」

「…それで、このメガネを開発したのか?」

「その通りです」

「…ふーん…」

天使共が、「人間生活を体験する為」との名目で。

揃って、このぐるぐるメガネを装着しているところを想像し。

…思わず噴き出してしまいそうになったのを、何とか堪えた俺。偉い。

やってることは間違ってないんだろうが、なんかベクトルがズレてるような気がするんだよな…。

…まぁ好きにしてくれ。天使の考えることはよく分からん。

とりあえず、このVRぐるぐるメガネが、予想以上に高性能だったことは理解した。

本当に、こーしえんに来たみたいな気分だよ。

「…はぁ、やれやれ。ベリクリーデ、もう満足しただろ?そろそろ…」

このふざけたメガネを外しなさい、と言おうとしたのだが。

VRぐるぐるメガネをかけたベリクリーデは、まだまだ元気いっぱいだった。