神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

驚いて、振り向くと。

そこには、背中に羽根の生えた男が立っていた。

クロティルダじゃないぞ。

その男が、いつの間にかドヤ顔で、俺達の背後に立っていた。

…誰?

「そんなあなたに、これを授けましょう」

「わーい。なぁに?これ」

その男が、突然何もない空間から、とある物を取り出した。

メガネだ。

そのメガネを、ベリクリーデに渡した。

…黒い、ぐるぐるメガネである。

こらベリクリーデ。知らない人に物をもらっちゃいけません。

「私とケルビム様が共同で開発した、高性能、人間生活再現VRメガネです」

「ほぇー。なんだか凄そうな名前」

おい。普通に会話を進めるな。

「…誰だよお前!?」

我に返った俺は、慌ててベリクリーデを庇うように前に出た。

いきなり出てくるな。幽霊かと思っただろうが。

すると、クロティルダが。

「リューイ。何をしに来た?」

と、そのぐるぐるメガネ男に尋ねた。

…え、リューイ?

何だか、何処かで聞き覚えのある名前…。

…あ、そうだ。

「…お前、天使か…!?」

「いかにも。"大天使アークエンジェル"第4位、サリエル…。名をリューイと言います」

やっぱり。

イーニシュフェルト魔導学院にやって来たという天使。

まぁ、ようは…クロティルダの同僚だな。

同じ、智天使ケルビム様とやらに仕えてるんだっけ?

そのリューイが、ぐるぐるメガネを持ってやって来た。

…一体何の用だ?

「…ベリクリーデ、下がってろ」

「ほぇ?」

ベリクリーデは相変わらず、誰に対しても警戒するということを知らないが。

俺は、そうは行かないからな。

クロティルダはただのアホだと分かってるから、今更警戒なんて必要無い。

それに、『ムシ』を巡る一件の時は、このリューイという天使に世話になった。

しかし、それとこれとは話が別だ。

クロティルダ以外の天使を、無条件に信用するほど、俺は優しくないぞ。

「お前、一体何をしに…」

「ほぇー。これ、面白い」

は?

振り返ると、あろうことかベリクリーデは、リューイにもらったぐるぐるメガネを装着していた。

…ベリクリーデ、お前…地味に似合ってんな。ぐるぐるメガネ…。

…って、呑気なこと言ってる場合かよ。

「…こら!知らない人に物をもらっちゃいけません!」

「え?知らない人じゃないよ?」

「そもそも人ではないぞ、リューイは。天使だ」

「知っとるわ!」

黙ってろ。そういうことじゃねーんだよ。

それなのに。

「どうぞ、お二人も」

「おぉー。すげーなこれ、どうなってんだ?」

「へぇ。面白いですね。まるで空間魔法で転移したみたいです。これがあれば、俺要りませんね」

あろうことか、キュレムとルイーシュまで。

リューイに手渡されたぐるぐるメガネを装着し。

しかも。

「ほう。これはなかなか…」

クロティルダまでもが、そのぐるぐるメガネをかけていた。

…何?このぐるぐるメガネ集団。