神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

しかし、ベリクリーデはしょんぼりとして。

「男の子なら良いのに…。私は駄目なんだ…」
 
などと言って、落ち込んでいる。

「あのな、ベリクリーデ…。お前は根本的な勘違いを、」

「クロッティ聞いて。ジュリスがね、ジュリスがねー」

あっ、こいつ。

「ベリクリーデ、まっ…!」

「俺を呼んだか、我が姫」

…来ちゃった。

なんで来るんだよお前。帰れよ。

ベリクリーデは、クロティルダの姿を見つけるなり。

そのクロティルダの胸に飛び込むようにして、すがりついた。

「あのね、クロッティ。ジュリスがね」

「どうした?」

「女の子は駄目って。男の子なら良いんだって、そう言うの」

おい。濡れ衣。

しかも、クロティルダも何を勘違いしたのか。

涙目のベリクリーデの頭を撫でながら、

「そうか…。仕方ない。世の中には、女ではなく男が好きだという性的指向の男が一定数存在すっ、」

「ちげーよ、この馬鹿!」

俺は思わず、クロティルダの後頭部をひっぱたいた。

何言ってんのお前?

…え?天使の頭をひっぱたくなんて不敬だ、って?

知るか。

しかも、更に悪いことに。

「おいルイーシュ。まーたバカップルが元カレと揉めてんぞ」

「本当だ。泥沼の三角関係ですね」

またしても絶妙なタイミングで、通りすがりのキュレムとルイーシュがやって来た。

おい。誰がカップルだって?誰と誰と誰が三角関係だって?

そして、誰が誰の元カレだって?

「で、今日はどうしたんですか、ベリクリーデさん」

「あのね、ジュリスが男の子が好きだって」

「ぶほぁっ!?」

ちょっと待て。誰もそんなこと言ってない。一言も言ってない。

ベリクリーデの発言に、思いっきり噴き出したキュレムは。

真ん丸に見開いた目を白黒させて、珍獣でも見るかのような眼差しで、俺を見つめ。

「…マジで?今日から、付き合い方を考えさせてもらうわ…」

「…違うっつーの」

「大丈夫ですよ、ジュリスさん。分かってますから」

ルイーシュが、ぽん、と俺の肩に手を置いた。

「…何がだよ」

「聖魔騎士団は性的マイノリティにも優しい組織ですから。ゲイを隠す必要はな、」

「だから違うっつーの!」

話を聞けよ。

お前ら一体、俺を何だと思ってるんだ?なぁ。

「…ねぇクロッティ。げい、ってなぁに?」

「それは、男性が男性を性の対象とす、」

「お前も律儀に説明するな!」

俺は再び、腹いせ混じりにクロティルダの後頭部をひっぱたいてやった。