神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

昼過ぎ頃に、聖魔騎士団魔導部隊隊舎に戻ると…。




「…なんか、めっちゃ良い匂いしない?」

「しますね…」

何だろう。徹夜明けの身体に染み渡る…。

…焼き肉みたいな匂いがする。

焼き肉…?

どっかでバーベキューでもやってんのか、と、匂いの元を辿る。

よく見ると、白い煙が上がっているではないか。

マジで何をやってるんだろうと、聖魔騎士団魔導部隊隊舎の裏に向かうと…。

「凄い脂が乗ってるな…。イノシシじゃないみたいだ」

「わーい、美味しい。がじがじ。はい、クロッティも食べて」

「ふむ。なかなかの味だな」

…この声は。

「…君ら、何やってんの?」

ジュリスとベリクリーデ、そして天使のクロティルダである。

このお馴染みの仲良し三人組が、裏庭に集まって。

…焼き肉パーティーをやっていた。

「あ、キュレムだ」

「おぉ、お前ら…。何処に行ってたんだ?」

何処に、ってジュリス。お前。

「…任務だよ」

「任務?」

「そうだよ。あの…凄く重大な任務だ。めっちゃ高難度の…。とにかく凄い大変な任務だったんだよ」

「そ、そうなのか…?」

そうなんだよ。

ネズミ退治だぞ?…凄く大変な任務だ。

俺達がこの任務を断ってたら、君達二人が行かされるところだったんだぞ。

「…で、君達は昼間っから仕事もしないで、何やってんの?」

「うぐっ…。…耳の痛いことを言ってくれるな」

「ジュリスね、イノシシ食べさせてくれてるの」

ジュリスの代わりに、ベリクリーデがそう答えた。

…イノシシ。

…そういや俺達が出掛ける時、冥界のイノシシを捕まえてきてたんだっけ。

忘れてたわ。今思い出した。

「あのイノシシ…捌いたのか?」

「…そうだよ…」

ジュリスは力なく、遠い目をして答えた。

「本当に苦労したんだからな。血抜きをして、皮を剥いで、一晩かけて下処理して…」

「お、おぉ…」

「準備が出来たから、ようやくこうして焼いてるんだ」

…そうだったのか。

ジュリスの顔には、色濃く疲労が滲み出ている。

お前も大変だったんだな…。…俺達も大変だったけど。

「ジュリス、これ美味しい」

「そうか。良かったな」

「ジュリスも食べて。はい、あーん」

「ちょ、無理矢理口に押し込もうとするなって」

…この野郎。

ベリクリーデちゃんみたいな美少女に「あーん」してもらうなんて。

天罰が下ってしまえ。

「ね?美味しいでしょ?」

「…あぁ。まぁな」

…けっ。