神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

で、ネズミに完全敗北した、翌日の夜。

そろそろ、第2ラウンドの時間である。

昼間は大人しいのに、今夜も、夜になると途端に。

天井裏から、ちょろちょろと走り回る音が聞こえてきた。

あいつら…。調子に乗りやがって。

今に見てろよ。今日こそは目にもの見せてくれる。…多分。

俺は今夜も、梯子を登って天井裏に顔を出した。

…相変わらず、ネズミ共が優雅にちょろちょろ走り回っている。

思わず、また新聞棒を振りかぶりたくなるが。

奴らが見た目以上にすばしっこいことは、昨日の一件で嫌と言うほど学んだ。痛いほどに学んだ。

だから、今夜は作戦を変えることにした。

その為に、昼間の間に色々考えたのだが…。

「…ルイーシュ、俺、良いこと思いついたよ」

「何ですか?」

「マシュリをここに放とう」

「…あー…」

あいつ、猫だろ?

ネズミ退治には猫だよ。やっぱり。

きっとネズミ共を追い詰めて、一匹残らず、捕まえてくれる…。

…。

「…まぁ冗談なんだけどさ」

「…ですよね」

マシュリは聖魔騎士団の人間じゃねーし。イーニシュフェルト魔導学院の猫だし。

勝手に連れて来る訳にはいかねーし。そもそも猫がネズミを追いかけるなんて迷信じゃね?

ともかく。

「じゃ、どうするんですか?」

「大丈夫だ。昨日の二の舞はしない」

俺は、愛用の魔銃を召喚した。

「一日かけて、新しい魔弾を考案した」

「ほほう」

「名付けて、追尾ふわふわ弾」

「何だか可愛いですね」

だろ?

別に可愛さを追求したつもりはないんだがな。

実用性を追い求めた結果、こうなった。

この新しい魔弾は、俺が即席で考えた新武器である。

家の中を傷つける訳にはいけない、という配慮から、魔弾の威力を通常より大幅に減らした。

「ルイーシュ、ちょっと試し撃ちしても良いか」

「どうぞ」

俺は魔弾を魔銃に装填し、ルイーシュに向けて発砲した。

発射された魔弾は、ふわっ、とした曲線の軌道を描き。

ルイーシュの手にぺちっ、と当たった。

「…人に向けて発砲するとは、良い度胸ですね」

「避けないお前も大した度胸だがな」

…そんで。

「どうだ?感想は」

「当たっても痛くないですね。ちょっとビリッ、としただけで」

「おぉ。それじゃ成功だな」

これなら、屋根裏に当たっても傷つける心配はない。

だが、当たればネズミ達を気絶させられるだけの威力はある。

退治するのではなく、まずはネズミを失神させ、一匹残らず捕まえる作戦だ。

一日かけて、この作戦を考え出した。

昨日と同じ轍は踏まないぞ。

「よし…やるぞ。人間様の恐ろしさを思い知れ」

俺は、特製の魔弾を装填した魔銃を、屋根裏の中に構えた。