神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

の、だが。

「ちっ…くしょう…!全然当たらねぇ…!」

ネズミ、めっちゃすばしっこくない?

つーか、俺の反射神経が雑魚なのか?そうなのか?

何回ぶん殴っても、悲しく空を切るだけ。

むしろ埃を舞い上げてしまって、ただでさえ悪い視界が、更に悪くなっている。

「百発百中の魔導師の名が泣きますね」

と、ルイーシュ。

「畜生。それを言うな…!」

俺達、もしかしてアレかな。

ネズミの倒し方、間違ってんのかな?

もっと、こう…新聞棒なんかじゃなくて。

ネズミ専用殺虫剤、みたいなものを買ってくるべきだったのでは…?

…時既に遅し。

「…なんか腹立ってきたから、魔銃で狙い撃ちにしてやろうか」

「落ち着きましょう、キュレムさん。屋根ごとハチの巣にするつもりですか」

あぁ、そうだった。

魔銃で撃てば、ネズミなんて一網打尽。

…だが、屋根に穴を開ける訳にはいかない。

魔銃、つまり魔法の力は使えない。

「くっそ…。ネズミがこんなにすばしっこいなんて…!」

「さすがに、くん煙剤とか使った方が良かったのでは?」

「今言うな、今…!」

今更言ってもおせーんだよ。

今は夜中だから、ホームセンターも閉店中だろ。

自分の力で何とかするしかない。

どうしよう。チーズでも置けば良いのか?

…畜生、こうなったら。

「…人間様を舐めやがって。絶対捕まえてやる…!」

「どうするんですか?」

「…追いかける」

埃まみれになることを承知で。

頭を低くして、天井裏に侵入。

埃の絨毯の上に膝をつき、逃げ回るネズミを追いかけ…、

…ようとしたのだが。

「はぶっふぇが!!」

積もりに積もった埃に、ズルっ、と盛大にずっこけ。

埃まみれ、ネズミの糞まみれの天井裏のに、顔面ダイブ。

盛大にゴッツンコ。

…冗談じゃなく、マジで、目の前に火花が散った。

痛過ぎて息が止まった。

あと、口の中に埃が大量に。

「…大丈夫ですか?なんか、人外生物みたいな声出てましたけど」

「…だ…。…い、ぶっ…」

「あー…。…大丈夫ではなさそうですね…」

…聖魔騎士団の魔導師が。

屋根裏に住むクマネズミに、完全敗北した瞬間である。

今ばかりは、聖魔騎士団の恥晒しめ!と罵られても、文句は言えなかった。