神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

さて、寝ぼけ眼のベリクリーデはさておき。

俺は、昨日閉めて寝たカーテンを開いた。

雨粒が、まだ窓にくっついたままだった。

やっぱり、昨日雨が降ってたんだな。

幸い、日が昇る頃には雨が止んだらしく、今はよく晴れている。

「なぁ、ベリクリーデ」

「…ん〜…?」

まだ眠い目を擦っているベリクリーデに、俺は質問を投げかけた。

「昨夜、何かあったか?俺は全然、何も気づかなかったんだが…」

「…昨日の夜…?」

「おばけだよ、おばけ。出たか?」

引っ越しで疲れていたのか、俺は朝までぐっすりと眠ってしまっていた。

果たして本当に心霊現象が起きたのか、定かではない。

ベリクリーデは覚えてるだろうか。

「…??分かんない。イルカに乗って海を泳いでる夢を見てたんだー」

「あ、そう…」

そりゃ楽しそうな夢で。良かったな。

イルカじゃなくて、お前、俺の上に乗っかって寝てたよ。

…ともかく、初日は俺もベリクリーデも、何も気づかなかったらしい。

もしかしたらベリクリーデの言う通り、初日は幽霊も遠慮してくれたのかもな。

そう思うことにしよう。

「…ん?」

その時、俺はキッチンに視線を移した。

「…」

「…?ジュリス、どうしたの?」

「…いや…」

とあることに気づいた俺は、台所に移動した。

「ベリクリーデ…。お前、昨夜水、使ったか?」

「みず?」

「台所の…シンクの蛇口だよ。ほら」

錆びたシンクの蛇口から、水がぽたり、ぽたりと垂れていた。

蛇口をきっちり締めると、水滴は止まった。

俺は昨日、一度もキッチンの水道は使わなかったはずだ。

だから、蛇口から水滴が垂れているということは、夜の間にベリクリーデが起きて、キッチンの水道を使ったとしか…。

…しかし。

「ううん、使ってないよー」

と、ベリクリーデは答えた。

…うん。…だよな?

あんなに熟睡、っつーか爆睡してたベリクリーデのこと。

朝まで一度も起きずに、ぐっすり寝てたんだろう。

…じゃあ、この蛇口を開いたのは誰だ?

「…ふむ。成程な」

「…?なーに?何がなるほど、なの?」

「いや?」

なんつーか、軽く先制パンチを食らった気分だなって。

ま、人を一人廃人同然にした事故物件だからな。

このくらいは、序の口というものだろう。