神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

あー…もう。

何が「聖魔騎士様」だよ。

そんな様付けで呼ばれるような、御大層なもんじゃないっつーの。

「…あのねぇ、奥さん。分かったから。もうこっちは良いから、寝ててくれないかな」

俺は髪の毛をがりがりと掻きながら、そう言った。

逆に気が散るって言うか。

こっちこそ気ぃ遣うから。やめてくれ。

「で、でも…」

「良いから。頼むから引っ込んでてくれよ。おもてなしは必要無い」

「ですが…」

まだ食い下がるか。

「別にボランティアじゃないんですよ。こっちも仕事で来てるので。気を遣っていただかなくて結構です」

と、ルイーシュがつっけんどんに言った。

…まぁ、この奥さん方には、このくらいつっけんどんな方が効くかな。

幸い、俺とルイーシュがこれだけ言って、ようやくふらふらの奥さんは、寝室に戻っていってくれた。

…やれやれ。

「…で、おばーちゃん」

俺は、おばーちゃんに向き直った。

「…出るんだって?この家。ネズミが…」

「えぇ…。毎晩、難儀しとります」

そうかい。

「娘曰く、引っ越してきた初日の夜から、天井裏で物音がするとか…」

「成程…」

「小さいものが走り回るような音が…。それも一匹だけじゃなくて、何匹もいるようなんです」

「…あー…」

お仲間がいっぱいいるのね。はいはい。

人間の人口密度より、ネズミの密度の方が高いんじゃね?

「とにかく物音が気になって眠れないし、家具や絨毯を傷つけられるのも困るし…匂いも気になるし」

「…だよなぁ…」

「何より、ネズミが変な病気を持っとらんとも限らんでしょう。見ての通り、うちには小さな子供がいますから…」

「…」

シュニィも心配してたな、それ。

騒音も気になるし、家具を汚されたり齧られるのも嫌だけど。

何より、子供達への健康被害が一番心配。

だからこそ、今すぐ、何とかして欲しい。

その為に、俺達聖魔騎士が呼ばれたのだ。

「どうか…何とか出来ませんでしょうか?」

「えぇ…まぁ、やれるだけのことはやってみるよ」

これほど、憔悴しきったおばーちゃんと奥さんの顔を見せられちゃな。

これでも一応、国民の税金で飯を食ってる者として。

やれることは、何でもやってみるよ。