神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺達が、その古い家を訪ねると。

赤ん坊を抱っこした、腰の曲がったおばあちゃんがよろよろと出てきた。

「どうも。聖魔騎士団の者なんですけど…」

「あぁ、あぁ。よく来てくださいました」

まるで拝むかのような口調と態度。

…それもそのはず。

おばあちゃんは抱っこ紐で赤ん坊を抱き、片手に2歳くらいの女の子を、もう片方の手で3歳くらいの男の子の手を引いていた。

…すげーなバーちゃん。一人で3人ものガキンチョの面倒見てんのか。

おばーちゃんは、既にヘロヘロにやつれているように見えた。

…お気の毒。

いくら孫達の面倒を見られるとはいえ、毎日のように元気盛りの子供3人に囲まれて過ごせば。

そりゃ、こんなげっそりするのも当然だよ。

子供ってのは、猿みたいなものだからな。

猿3匹の相手をしていると思うと、このおばーちゃんには頭が下がる。

「本当に…この度はわざわざ聖魔騎士団の皆さんに、ご足労いただきまして…」

「あー、いやいや。そういうのはいいんで…」

ただでさえ曲がっている腰を、更に深々と曲げてお辞儀しようとするおばーちゃん。

ちょっと、やめてくれよ。

そういう堅苦しいの、俺苦手なんだって。

しかも。

「あ、ママ!」

「まま〜!」

おばーちゃんに連れられていたガキンチョ二人が、廊下の奥からやって来たパジャマ姿の若い女性に駆け寄った。

ママ?…ってことは。

この人が、依頼主の秘書官…の、奥さんか。

…あれ?シュニィによると、確かこの奥さん、過労で寝込んでいるんじゃ?

「…聖魔…騎士団の方、ですよね?」

「あ、はい…」

疲れた顔をした奥さんが、俺達を見つめながら聞いてきた。

「そうですか…。本当に来てくださるなんて。…なんとお礼を言ったら良いか…」

「いや、あの…」

まだ何もしてないんですけど?

来ただけなのに礼を言われちゃ、俺達、立つ瀬がないんですけど?

それよりあんた、奥さん。

「…寝込んでいるんじゃなかったのか?大丈夫なのか、起き上がって」

「えぇ…ちょっと…体調は、あまり良くないんですけど…」

とか言いながら。

「げほっ、ごほっ…げほっ」

突然、激しく咳き込み始める奥さん。

ああほら。言わんこっちゃない。

「ママ!大丈夫?」

「まま〜!」

「だ、大丈夫…。ごほっ、ごほっ…。だ、大丈夫だから…」

「起き上がっちゃ駄目。奥で寝てなきゃ駄目だよ。聖魔騎士様へのご挨拶は、私がするから…」

奥さんに駆け寄る子供二人と、腰の曲がったおばーちゃん。

…満身創痍、って感じだな。

見てるだけで、超絶痛々しい。