神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

シュニィはその話を、フユリ様から聞かされたらしい。

「実は、私の秘書官の家の話なんですが…」と、切り出されたそうだ。

フユリ様は、自分の部下の家庭の窮地を知り。

何とかしてやりたいと思って、シュニィに相談したのだ。

そして、シュニィも。

「たかがネズミ…ではありますが、小さな子供がいる家庭にとっては、大変な問題だと思うんです」

…とのこと。

実際に、子育て中のシュニィが言うと言葉の重みが違うな。

子供がいない家庭でも、ネズミは大きな問題だよ。

「それに、フユリ様からの相談でもありますし…。出来れば、急いで解決したいと思ってるんですが…」

「…」

「私は、これから任務で出なければならなくて…」

「…成程…」

それで、暇人の俺とルイーシュにお鉢が回ってきた訳ね。

説明どうも。

「お二人にはスズメバチ駆除の経験もあるので、お任せ出来るかと…」

「…スズメバチとネズミは違うだろ…」

「そ、それはそうなんですけど」

…ネズミ、ねぇ。

スズメバチに比べりゃマシだろ?と言われれば、それはまぁそうなんだが。

でも、そういう問題ではないんだよ。

…かと言って、シュニィの気持ちも分かるだけに。

「それは魔導師の仕事じゃないだろ!」…とかも言えない。

誰の仕事だろうが、やれる奴がやりゃ良いんだよ。

…だが、これだけは聞かせて欲しい。

「…それさ、俺らが断ったらどうなるの?」

「そうですね…。今日、他に予定が空いている方は…。ジュリスさんとベリクリーデさんですね」

「いや…あいつらは無理だろ」

「えっ?」

ちょっと、あの…多分…。

「ジュリスは今頃…イノシシを捌いてると思うぞ」

「い…イノシシ…!?」

「あぁ。イノシシだ」

ベリクリーデちゃんが捕まえてきたイノシシを、血まみれになりながら捌いてると思う。

そんなジュリスに、「ちょっとネズミ退治しに行ってくれない?」なんて言えるものか。

「今それどころじゃないんだけど!?」って言われると思うぞ。多分。

…暇を持て余しているのは、俺とルイーシュだけ。

「…」

「…」

俺は、無言でルイーシュと顔を見合わせた。

多分、お互い同じことを考えていたと思う。

…タイミング悪く暇人だった俺達が悪い。

「…分かったよ。行くよ」

そう言うしかないだろう。

俺達が断ったら、ジュリスとベリクリーデにお鉢が回ると聞かされたら。