神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

それどころか。

「見て見て、ジュリス。これおっきいでしょ」

「な…な、なん…」

ジュリス、絶句。

そりゃ絶句するわ。

嫁が、突然イノシシを担いで帰ってきたら。

全身に被ってる血は、それ、イノシシの血?

…何?狩猟にでも行ってきたの?

リアルモンスターハ●ター?

「お前っ、それ…何処から…!?」

「え?冥界で獲ってきた」

お散歩感覚。

そんな気軽に行くところじゃないはずなんだけどな…。…冥界。

ベリクリーデちゃんにとっては、近所の公園と同じ感覚なんだろうな。

「冥界…!?行ったのか、いつ!?」

「さっき」

「一人で!?」

「クロティルダと一緒に」

「あんの、クソ天使…!!」

神聖な天使に「クソ」をつけて呼ぶのは、ジュリスくらいのもんだよ。

「メイカイイボイボイノシシなんだって」

いや、品種は別にどうでも良いけど。

「でも…何で突然、イノシシなんて…」

「ジュリスにお肉、食べさせてあげたかったの」

…は?

「ジュリスこの間、ザリガニ食べさせてくれたでしょ?」

ベリクリーデちゃんは、目をキラキラさせながらそう言った。

ベリクリーデちゃんはしょっちゅう奇行に及ぶが。

一見何も考えていないように見えて、実はベリクリーデちゃんなりの動機があったりする。

…まぁ、本当に何も考えてない時もあるけど。

ザリガニっていうのは…この間、ベリクリーデちゃんが川で捕まえてきたという…あのザリガニのことか。

味噌汁にしたザリガニ、俺とルイーシュもご相伴に預かったけど、凄い美味かった。

「あのザリガニ、美味しかったから、何かお礼してあげたいなって思って」

「…」

「クロティルダに相談したら、じゃあ冥界に美味しいものを取りに行こうってことになったの」

「…」

「で、これ捕まえてきちゃった」

…そんな軽いノリで、討伐されてしまったイノシシが憐れ。

「一緒に食べよ、ジュリス」

「おまっ…。お、おまっ…!お前って、奴はっ…!」

言葉になっていないジュリスである。

「こ、こんなっ…!状態で持って帰ってきて、しかもそんな格好で…!」

「ふぇ?」

「ふぇ、じゃないんだよ、この馬鹿ちんっ!」

叱られても、何で怒られたのか分かっていないらしく、ぽかんとしているベリクリーデちゃん。

…あーあ…。

「…行くか。ルイーシュ」

「…ですね」

俺もルイーシュも、全てを見なかったことにして。

改めて、俺達はシュニィのもとに向かうことにした。