神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

チビベリクリーデと無闇は、互いにじーっと見つめ合っていた。

「…」

「…」

…お互い、無言で。

多分お互い、同じことを考えていると思う。

「この人誰だろう。何でこんなところにいるんだろう」みたいな。

すると。

無闇の背後に、ふわりと女性が現れた。

無闇の持つ魔導書『死火』の化身、月読(つくよみ)である。

知らない人が見たら、酷く驚くだろうな。

突然何もない空間に、幽霊みたいに足のついていない人物が現れたのだから。

しかし、ベリクリーデはちっとも恐れる様子はなかった。

子供の方が、案外そういうのは恐れないものなんだよな。

月読は無闇と違って、チビベリクリーデを見てびっくりし。

「うわぁ。見てよ無闇君、この子!」

「見てるが」

「かわい〜!おーよしよし、怖くないよ〜。おいでおいでー」

「ちょっと待て。お前が子供を相手にしていると、誘拐犯とまちが、」

「んー?無闇君、今何か言ったかな〜?」

「…いや、特には」

「かわいー!」

月読は、ベリクリーデの頭をよしよし、と撫でた。

ベリクリーデの方も、誰かは分からなくても、撫でられて嬉しそうだった。

「それにしても、何故こんなところに子供が…?」

当然の疑問だな。

すると、月読が何かに気づいたようで。

「ねぇ無闇君。この子」

「ん?」

「何だか、ベリクリーデちゃんにそっくりじゃない?」

「…ベリクリーデ?」

月読に指摘されて初めて、無闇は目の前にいる幼女の顔が。

自分の同僚とよく似ている、ということに気づいたようだ。

「…言われてみれば、確かに面影があるな」

「でしょ?まるでベリクリーデちゃんが小さくなったみたい」

月読、お前さん、鋭いな。

今のところ、変な勘違いをする奴ばっかだからな。

「…でも、そんなこと有り得ないよねー」

「他人の空似だろう。世の中には、自分の顔によく似た顔の人間が三人いると言うし」

「それより、私はもっと現実的な理由だと思うけど」

…現実的?

「どういう意味だ?」

「ほら、きっとこの子は、ベリクリーデちゃんの子供なんだよ」

おい。

「成程。じゃあジュリスの子でもあるな」

「だね」

おいって。

結局、お前らもそういう発想になるのかよ。

俺は一体、何度同じ説明を繰り返せば良いんだ?

もううんざりしてきたから、このまま誤解させたままでも良いんじゃないか…と。

思ったけど、俺の子供だと誤解されたままなのはもっと嫌だ。

「…おい。お前ら」

「あ、ジュリス君だ」

「じゅいしゅー」

チビベリクリーデが、ちてっ、ちてっ、とこちらに戻ってきた。

追いかけっこ終了、だな。