神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「…」

「こんにちは。ベリクリーデさん」

ベリクリーデは、自分を抱っこしているシュニィの顔を、大きな目でじっと見つめた。

…そして。

「…ふぇっ…」

じわっ、と両目に涙が浮かんだ。

え?

「ふぇぇぇぇ」

いかにも切なそうな、泣き声をあげ始めるではないか。

「あらあら、大丈夫ですよ。よしよし、泣かなくて良いんですよ…」

「ふぇぇぇ」

「泣かないでくださいね。よしよし、良い子良い子」

「ふぇぇぇぇ」

駄目だ。

シュニィがいくらあやしても、チビベリクリーデはますます泣くばかりで、泣き止まない。

それどころか。

「ふぇぇぇ。うぇぇぇ」

「あら。ちょっと…。暴れないで。大丈夫、大丈夫ですから」

チビベリクリーデは、小さな手足をばたばたさせて、シュニィの手から逃れようとしていた。

まるで、離してくれと言わんばかり。

これは予想外の反応。

さっきまで、ずっと静かに眠っていたのに。

シュニィに抱っこされた途端、泣き始めた。

「どうしたんでしょう。いきなり…」

目が覚めたらシュニィに抱かれていたから、びっくりしたのか?

でも…。

「ふぇ…。…い、しゅ」

え?

チビベリクリーデは、小さな両手をこちらに伸ばしていた。

そして、俺をじっと見つめながら。

「じゅいしゅ」

と、言った。

じゅいしゅ…。じゅいしゅって、もしかして。

「…!ベリクリーデさん、もしかして…」

「じゅいしゅ…。じゅいしゅ」

何度も繰り返し、俺を見つめながらそう呼んだ。

…最早、疑いようもない。

「そう…。そうですよね、私じゃなくて、ジュリスさんが良いですよね」

「じゅいしゅ」

「はいはい、分かってますよ」

ふふふ、と微笑んで。

シュニィは、俺の手にベリクリーデを戻した。

するとベリクリーデは、俺に向かって両手を伸ばしてきた。

「じゅいしゅ。じゅいしゅ」

「…はいはい。分かったよ」

…ったく。小さくても大きくても、手がかかるのは相変わらずだな。

「なんか…。妙に懐かれてんだよなぁ…俺…」

「ジュリスさんは優しいですから。当然だと思いますよ」

「そうかねぇ…。別に嬉しくないけど…」

結局、俺が面倒見なきゃいけないってことね。

別に良いよ。…この様子じゃ、無理矢理シュニィの家に連れて行っても、シュニィが大変な思いをするだろうし。

それに…ベリクリーデも辛いだろうし。

だったら、俺が面倒見るよ。

「ベビー用品、急いで持ってきますね」

「あぁ…頼む」

こうして。

やっぱり、当初の予定通り。

俺が、チビベリクリーデの面倒を見ることになった。