神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺は、必死にシュニィに説明を繰り返した。

この子は俺の子じゃなくて、ちっちゃくなったベリクリーデなんだって。

クロティルダ曰く、冥界産の怪しいキノコを拾い食いした結果、こうなったんだって。

長くても一週間程度で元に戻るから、それまで何とか、面倒を見なければならない。

差し当たって、ベビー用品を一揃い揃えなければならないのだが、新品を買うのは勿体ないので。

良かったら、シュニィの家で、使わなくなったお古のベビー用品などがあれば、それを使わせてもらえないだろうか。

ここまで説明して、シュニィはようやく理解してくれた。

「成程…。そういうことだったんですね」

「そうだよ…」

「すみません、私、変な勘違いをしてしまって…」

まったくだよ。一体どんな勘違いだ。

「てっきり、ジュリスさんとベリクリーデさんのお子さんだと…」

「冗談じゃねぇよ…やめてくれよ」

「そうですね。まだ、ちょっと早いですもんね」

「まだ」って何だよ?

いつかは予定がある、みたいな言い方をするな。

そんな予定はねーよ。

「小さい時のベリクリーデさんは、こんな風だったんですね。…ふふ、可愛いですね」

シュニィは笑顔で、ベリクリーデの頬を覗き込んだ。

…何、微笑ましい感じで見てんだよ。

「アイナが小さい時のことを思い出します」

「あ、そう…」

シュニィの母性愛が刺激されたらしい。

…それは結構なんだが。

「…で、さっきの頼みは?聞いてもらえるのか?」

「あ、はい。ベビー用品ですね。昔アイナが使っていたものがそのまま揃っているので、それをお貸ししても良いんですが…」

「…が?」

「…よろしければ、ベリクリーデさんは、うちで預かりましょうか?」

…え?

「いや、でも…。…大変だろ?」

子供を一人預かるっていうのは、簡単なことのように思えて、意外と大変だぞ。

言葉の通じる年頃の子供ならまだしも、今のベリクリーデは、一歳半〜二歳程度。

自由に動き回るものの、言葉はまだほとんど通じない。という、一番難しい年頃である。

人はそれを、「魔の2歳児」呼ぶ。

しかし、シュニィは頼もしくこう言った。

「大丈夫です。これでも、アイナとレグルスの二児の母ですから」

あぁ…そういや、そうだな。

この上なく頼もしい言葉である。

「それに、私の屋敷では子守のお手伝いを雇っているので…。一週間くらいなら、問題なく面倒を見られますよ」

「…そうか…」

…正直、この申し出は非常に助かる。

チビベリクリーデの面倒を見る…と決めはしたが、進んでそうしたい訳じゃないし。

ベリクリーデとしても、歳の近い(?)アイナやレグルスと一緒の方が、安心するかも。

「…分かった。それじゃ、お言葉に甘えて…預けさせてもらえるか」

「はい、お任せください」

と、シュニィは微笑んで、請け負ってくれた。

…やれやれ。

シュニィに任せてしまうのは忍びないが、お陰で安心したのは事実である。

「さぁ、ベリクリーデさん。こちらにどうぞ」

シュニィは、俺の手からチビベリクリーデを受け取り、抱き上げた。

さすが。現役育児中の二児の母。
 
抱き方がしっかりしている。

「よしよし、良い子ですね…」

「…ふぇ?」

シュニィの腕に抱かれたチビベリクリーデは、ふと目を覚ました。

おぉ…起きたか。