神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

こうして俺達は、今日からここに住むことになる訳だが。

ほぼ手ぶらで来てしまったので、まずは生活に必要なものを買い出しに行き。

本格的な調査は、明日から始めることにした。






…で、問題は今日の夜、だな。

「ベリクリーデ。まずは今夜の打ち合わせを、」

「ふわぁ〜…。ねむい…」

「おい。まだ寝るんじゃねぇ」

俺は、ベリクリーデの肩をガシッ、と掴んだ。

寝てる間に幽霊が出るかもしれない、という恐怖は、お前にはないのか?

「ふぇ?」

「お前、自分が何の為にここに来たのか分かってるか?事故物件の調査に来たんだぞ」

そして、これからいよいよ夜を迎えるんだぞ。

もっと緊張感ってものを持て。

「今夜、早速出るかもしれないんだ。呑気に寝てて良い訳ないだろ」

「?出てきたらどうするの?」

「え?」

出てきたら…。

…どうしよう?

「捕まえる?」

「…つっ…。捕まえはしないけど…」

「じゃあ何するの?」

…何するんだろうな?

それは分からないけど…。とにかく、心霊現象の調査に来てるんだから。

まずは、その心霊現象に遭遇してみないことには、次のアクションも決められないだろ。

「それにジュリス。ほら、おばけさんの身になって考えてみようよ」

「は?」

「私達、今日来たばかりなんだよ?はじめましての関係なんだよ?」

…それは、そうだけど。

「きっとおばけさんも、初日は緊張してるはずだよ。私達が身構えてたら、きっと出てきたくても出てこられないよ」

「…」

「私とジュリスがリラックスして、ぐーぐー寝てたら、きっとおばけさんも安心して出てきてくれるはずだよ」

…何?その頭悪そうな理屈。

妙に説得力を持たせてくるのやめろ。

「よし、それじゃ寝よー、ジュリス」

「ちょ、待てって。せめて布団敷いてからにしろ」

床にそのまま転がって寝ようとしてやがる。

さっき、ホームセンターで布団を二組買ってきたから。

「それと、毛布を掛け布団代わりにして…ベリクリーデ、敷布団、床に敷いてくれるか?」

「うん、分かったー」

こっちが枕で、こっちがシーツで…と、封を開けて、っと…。

そうしている間に、ベリクリーデが。

「ジュリス、お布団敷いたよー」

「おぉ、ありが…。って、何で二つくっつけてんの…!?」

ベリクリーデはあろうことか、二組の敷布団を二つ、ぴったりと並べて敷いていた。

それは、さながら新婚夫婦の寝室のよう。

何考えてんだお前。

「ちょ、俺は別の場所に。せめてもう少し距離を、」

「それじゃ、おやすみー」

「おい、コラ!ベリクリーデ!」

「…zzz…」

…寝やがった。

引っ越し初日。初めての場所。新しい布団。しかも事故物件。

それなのに、こんな一瞬で…。

「…はー…」

…もう、何も考えないでおこう。