神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「…ベリクリーデの奴…このキノコ、食べたのか…!?」

「そうだろうな」

「…ばっ…!」

何処で拾ったのか知らないが、その辺で拾ったものを口に入れちゃ駄目だって、小さい時に習わなかったのか。

習わなかったんだろうな。親いないから。

「こんな…!見るからに毒キノコみたいなキノコを…!」

「落ち着け、ジュリス。これは毒キノコではない」

この見た目で、何で毒キノコじゃないんだよ?

カサの部分も、軸の部分も真っ青なんだけど?

おまけに、グロテスクな白いイボイボまでついている。

腹ペコ状態で見つけても、絶対口には入れないだろう。

それなのに、毒キノコじゃないだと?

「食べても死ぬようなことはない」

「本当かよ?」

「…ただ、しばらく身体が幼児化するだけだ」

「それは猛毒だよ、馬鹿」

何が「毒キノコじゃない」だ。普通に毒キノコだよ。

「恐らくこれは、メイカイチビチビキノコだろう」

「この馬鹿…何だってそんなものを…」

見つけたから食べたのか?アホなのか?馬鹿なのか?

そこら辺に落ちてるものを、ましてやキノコなんて、絶対素人判断で拾って食べちゃ駄目だからな。

俺との大事な約束だ。

アホなことするんじゃねぇ!と、叱ってやりたいのはやまやまだったが。

「…」

「…すぴー…」

寝ているチビベリクリーデを見ると、何も言えなくなってしまう。

…だって、今のベリクリーデは、ただの幼児なんだもん。

まだ自我も芽生えていない、善悪の判断もつかない幼児を叱ったって、仕方ないだろ。

むしろ、それは大人の八つ当たりだ。

…元に戻ったら、思いっきり叱るのでよろしく。

「…起きてしまったことは仕方ない。その毒、何とか解毒出来ないのか?」

最悪、このまま大人になるまでベリクリーデを育てなきゃいけない。

しかし。

「放っておけば自然に解毒する。摂取した毒の量にも寄るが…短くて3日…長くても一週間と言ったところか」

とのこと。

良かった。元に戻るんだな。

「そうか…。良かった。ベリクリーデの育児をしなきゃいけないかと思った…」

「それはそれで楽しそうだな」

「…何か言ったか?」

「いや」

ふざけんじゃねぇぞ。対岸の火事だと思いやがって。

「…とにかく、元に戻るならそれで良い。…とはいえ、どうやって面倒見れば良いのか…」

「…俺が預かろうか?」

マジで?

そうしてもらえるなら有り難いが。

「でも…お前、育児の経験なんてあるのか?」

「ない」

「だろうな…」

育児の経験のない奴に、いくら中身がベリクリーデとはいえ、2歳未満の子供を預けて良いものか。

…それに、ベリクリーデを天界に連れて行かせてしまったら。

例の…クロティルダの姉が、何をしでかすか分からないからな。

俺の目の届かないところにやってしまうと、余計に心配が募りそうだ。

…かくなる上は。

「…分かった、腹を括るよ」

「ジュリス?」

「ベリクリーデは俺が預かる」

男に二言はない。