神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

かくなる上は。

「クロティルダ!…クロティルダ!いるか?いるんだろ?」

俺は寝ているチビベリクリーデを起こさないよう、声を潜めるようにして叫んだ。

あのストーカー天使なら、ベリクリーデが「こう」なってしまった理由を知っているかもしれない。

俺が呼んで、来るかな?あいつ。

「クロティルダ!おいクロティルダ…!」

…しーん。

「畜生、あのポンコツ天使。こんな肝心な時に何処で油を売って、」

「…ここにいるが」

「うわっ!見えないところから出てくるなよ」

びっくりするだろうが。

うっかりベリクリーデを起こしてしまったかと思ったが、ベリクリーデはすやすやと眠っていた。

ホッ。

…で、来てもらったところ、早速だが。

「…クロティルダ、これを見ろ」

と言って、俺は眠っているチビベリクリーデを指差した。

「…」

じー、と見つめるクロティルダ。

「…子供だな」

「その通りだ。…で、誰だと思う?」

「俺は、あまり人間の赤ん坊のことをよく知らないが…。ベリクリーデ…我が姫に似てるな」

「本人だ」

「…」

驚くなかれ、本人なんだよ。

似てるんじゃなくて、本人そのものなんだ。

クロティルダは、相変わらず表情を変えることなく。

「…しばらく見ないうちに、随分と縮んだな」

…言うべきことは、それだけかよ。

「お前はそれで済ませて良いのか?」

「人間は時に成長することもあれば、時に退化することもある。そう思えば縮んでも不思議なことは、」

「不思議だよ。ふざけんな馬鹿」

それっぽい理屈をつけて納得しようとするな。もっと疑問を持て。

物分かりが良過ぎるだろ。

「可愛らしい姿になったものだな」

クロティルダは、つんつん、とチビベリクリーデの頬をつついていた。

…楽しんでんじゃねーぞ…。

…それにしても、クロティルダのこの反応を見るに…。

「…クロティルダ、お前…ベリクリーデなんでこうなったのか、知らないんだな」

知ってたら、縮んだ、なんて言わないだろうし…。

「一体何でこんなことになったのか…」

「…恐らく、原因はこれだろうな」

えっ?

クロティルダが、何かを拾い上げた。

チビベリクリーデが眠っていた、ベッドの隅っこの方に。

齧りかけの、青いキノコが転がっていた。

…何だ。この毒々しい色をしたキノコは。