神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…と、意地悪なことを言ったものの。

俺は別に、ベリクリーデを怖がらせたい訳じゃない。

…ちょっといじめ過ぎたかな。

そういう…ホラー系の話って、得意な得意だけど、駄目な人は本当に駄目だからな。

ありとあらゆるジャンルの映画を観たけれど、ホラー映画だけはどうしても、絶対に無理。って人もいることだし。

ベリクリーデがそのタイプだったら、事故物件なんて、1秒だって足を踏み入れたくないだろう。

…一緒に住むとは言ったものの、ベリクリーデがどうしても事故物件に耐えられないなら。

今すぐ、今日のうちに帰って良いぞ。

俺だって無理強いはしたくない。

怖がらせたくもないしな。

「ベリクリーデ。もしお前が無理なら、帰っても…」

「おばけ出るの?このお部屋」

え、いや。

「…まだ見てないからはっきりとは言えないが、一応、そう言われてるな」

出るんだろ?…多分。

前住んでた住人が精神を病んだくらいには、曰くがある部屋なのだ。

「ほぇー」

…その「ほぇー」っていうのはどういう意味?

表情をまったく変えていないから、いまいち何考えてるのか分からないが。

…怖がってるようには見えないな。

俺、ベリクリーデが怖がってるとこ…そんなに見たことないけど。

ベリクリーデが怯えてたり怖がってたりしたら、むしろ俺が爆発してブチギレてしまうからな…。

「…大丈夫か?」

「へ?何が?」

「この部屋…幽霊、おばけがいるかもしれないんだぞ」

「…ほぇー」

だから、そのほぇー、ってのはどういう意味で、

するとベリクリーデは、何を思ったか、その場にすっくと立ち上がった。

ど、どうした?

「おばけー。おばけさーん」

あろうことか、部屋の天井に向かって、おばけに呼びかけ始めた。

「おばけさんおばけさん。おいでくださーい」

「違う、ベリクリーデ。それこっくりさん」

「うーん。来てくれないなー…。…緊張してるのかな…」

…。

…幽霊が緊張することって、あんの?

「あ、そうだ。おばけさんは、私達が来るより前から、このお部屋に住んでるんだよね?」

「え?あぁ…まぁ、そうだな」

「じゃあ、先輩なんだ。もっとちゃんと挨拶しなきゃ」

と言うなり、ベリクリーデはその場に体育座り。

「おばけさんこんにちは。今日から一緒に暮らすベリクリーデだよー」

あろうことか、幽霊相手に自己紹介し始めた。

これには、幽霊も困惑…。…してるのだろうか。見えないから分からん。

「仲良くしようねー」

「…仲良くしてどうするんだよ…」

…とはいえ。

この様子を見るところ、ベリクリーデは幽霊を怖がるタチではないらしいな。

それは、ひとまずホッとしたよ。