神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ここは下手に刺激してはいけない、と思い至ったのか。

女性王宮使用人は、そっと、ポケットからメモ帳とペンを取り出した。

「…名前は?」

「私?ベリクリーデって言うんだよ」

「俺はクロティルダだ」

「…」

メモメモ、とメモ帳に名前を記載する。

職質始まってね?

「職業は?」

「しょくぎょーって?」

首を傾げるベリクリーデ。

職業だよ、職業。お前は聖魔騎士だろうが。

それなのに、アホの子ベリクリーデは。

「普段は何をしてるんですか?」

「ジュリスのお友達」

などという、見当違いのお返事。

ずっこけるかと思った。俺を巻き込むな。

あと、なんでドヤ顔?

ベリクリーデの意味不明な返答に、度肝を抜かれながらも。

今度は、彼女はクロティルダに尋ねた。

「…そちらの方は?職業は…」

「天使だ」

「…」

「…?どうした?」

「…いえ」

その目を見れば分かる。

「あっ、この人達ヤバい人だ」と認定したらしい。

違うんだよ。いや違わないけども。

信じられないかもしれないが、本当に天使なんだ。

「性別…は、女性と男性…。では、年齢は?」

職業に関する質問は、一旦脇に置いて。

今度は、年齢を尋ねた。

まず先に答えたのは、クロティルダだった。

「天使に年齢などという概念はない。生きているか、否か。そのどちらかだ」

何、無駄にかっこいい返事してんの?

中二病かよ。

見ろ。王宮使用人の、あの顔。

「うわぁ…話通じない人だ…」って思ってるぞ。間違いない。

一方、ベリクリーデの方は。

「年齢…。…年齢って、私何歳なんだろう?」

「覚えてないのか、我が姫」

「うーん…。…ジュリスに、よく『お前は幼稚園児か!』って言われるから…。…5歳くらい?」

ちょ、ちが。

それは精神年齢のことを言ってるのであって、実際の年齢はもっと…。

いや、俺もベリクリーデの正確な年齢は知らないけども。

少なくとも、5歳ではないだろ。

「ふざけてないで、真面目に答えてください」

王宮使用人も、苛立ちを隠せずにそう言った。

ごめんな。ふざけてるように見えるよな?ふざけてるようにしか見えないよな?

でも、違うんだ。

あれで二人共、至って真面目なんだよ。

「そういうことは、俺ではなくリューイに尋ねる方が良いだろうな」

「…リューイ?誰ですか、それは」

「天使仲間だ。智天使ケルビムの眷属、”大天使アークエンジェル”第4位サリエル…」

「成程分かりました。…ちょっと、お二人共奥で話しましょうか」

ヤバい。

これは完全に不審者だと確信したのか、王宮使用人は能面みたいな顔で、ベリクリーデとクロティルダを連れて行こうとした。

俺が傍観していられたのは、ここまでだった。