神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

畜生…。俺が戻ってくるのが、もう少し早ければ。

あのクソ野郎、なんでこんな時だけ…。

「今日はジュリスはいないのか」

「ジュリスはお仕事なんだよ」

「そうか」

…なんだよ。

俺がいなかったら、なんか問題でもあるのか。

それともなんだ。俺がいない間に、ベリクリーデに良からぬことを…。

「見て、クロッティ」

「何を?」

「ほら、カタツムリ」

ベリクリーデが指差した花壇には、大輪のアジサイが咲いていて。

そこにカタツムリが一匹、のっそのっそと歩いていた。

…よく見つけたな。

「可愛いね、カタツムリ」

「そうか。良かったな」

「でーんでんむーっしむっしかーたつーむりー♪」

歌うんじゃありません。

「ねぇ、クロッティ」

「なんだ」

「カタツムリって、殻がなくなったら、何ツムリになるの?」

…。

…??

…それはただのナメクジなのでは?

意味不明なんだが、クロティルダは馬鹿真面目な顔で。

「そうだな…。殻が無しだから、ナシツムリにでもなるのかもしれない」

お前も何を言ってるんだよ。

「そっかー」

ベリクリーデも、それで納得するな。

あぁ、もう駄目だ。頭痛い。

「よーしよし、おいでーカタツムリちゃん」

あろうことか、ベリクリーデはカタツムリに指を伸ばして、自分の手にとまらせようとしている。

こら、やめなさい。寄生虫とかいるんだぞ。

…すると。

「…あなた達、そこで何をしているんですか!?」

突然、大声が聞こえてきてびっくりした。

慌てて振り向くと、王宮使用人の女性が、王宮の花壇の前に座り込むベリクリーデとクロティルダを見つけ。

警戒心を剥き出しにして、2人に駆け寄った。

突然怒鳴られたのに、ベリクリーデもクロティルダも、ぽやんとした顔をしている。

「ここが何処だか分かってるんですか?何処から入り込んだんです!?」

「何処から…?…あっち」

ベリクリーデは、王宮の入口付近を指差し。

「俺は上からだな。天界だから」

クロティルダは、何もない空中を指差した。

「…!?」

クロティルダの馬鹿正直でアホな回答を聞いて、王宮使用人の女性は、更に警戒心を強めた。

クロティルダ。お前余計なことを言うな。

「…そこで何をしてるんです?」

「カタツムリ、見てる」

「人間界の自然の営みを観察中だ」

「…」

やっぱり怪しい人だ、と確信したらしい女性王宮使用人。

…違うんだよ。確かに怪しいけども。

でも、悪い奴ではないんだ。…決して。