神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

見ろよ、ベリクリーデの奴。

窓にべったりくっついて、ザーザーと降る雨を眺めていた。

「ジュリス、雨だよ」

「あぁ…。…雨だな」

「雨だね〜」

…それがどうした、って感じだが。

「雨が降ると、何だかうきうきするよね」

「…あ、そう」

…カエルかな?

まぁ良いけどさ。ベリクリーデが大人しいから。

暇するとすぐ、「ジュリスあそぼー」とか言ってくるからな。

大人しく窓に貼り付いて、雨を眺めてるんだから。

好きにさせておけば良いや。

「母さんが〜♪じゃのめでお迎え嬉しいなー♪」

なんか歌ってるし…。

「…ねぇジュリス、『じゃのめ』って何?」

くるりと振り向いて、尋ねるベリクリーデ。

最近の子は、じゃのめなんて知らないよな。

「蛇の目傘のことだよ」

「傘なのかー…」

「…なんだよ?」

「ううん。雨が降っても雪が降っても、傘を持って迎えに来てくれるお母さんなんて、私には居ないから…。どんな感じなのかな?って思って」

「…」

唐突に、ちょっと重い話をするんじゃねぇよ。

「…大丈夫だよ、ベリクリーデ」

「?何が?」

傘を持って迎えに来てくれる母さんは、いないけど。

「雨が降ったら、俺が傘持って迎えに行ってやるよ」

「…ほんと?ジュリス、来てくれるの?」

「あぁ」

「やったー。ありがとう、ジュリス」

別にそれくらい、どうってことねーよ。

「じゃあ、雨が降ったら、私もジュリスをお迎えに行ってあげるね」

「おぉ…。傘を忘れんなよ」

お前のことだから、傘を忘れて、ずぶ濡れで迎えに来そうだ。

その時は…。…二人で濡れて帰るか。

そうならないように、俺は折りたたみ傘をカバンの中に忍ばせておく派だ。



…すると、そこに。

「ジュリスさん、失礼します」

「ん?」

こんこん、と控えめに部屋の扉がノックされたかと思うと。

「あ、良かった。いらっしゃったんですね」

「おぉ…。シュニィじゃないか」

俺とベリクリーデの上司でもあるシュニィが、俺の部屋にやって来た。

「どうしたんだよ?」

「はい。実は、ちょっと頼みたいことがありまして…」

仕事の依頼らしい。

何度も言ってるが、お前は上司なんだからさ。

お前がわざわざ足を運ばなくても、遠慮なく呼びつけてくれて良いんだぞ。

いるか?こんなに腰の低い上司。

まぁ、そこもシュニィらしいっちゃらしいが。

「そうだったんだ。何でもお願いしてくれて良いよ」

何故かベリクリーデが、胸を張って答えた。

…何故お前が返事をする?

「ありがとうございます、ベリクリーデさん」

シュニィも。そこはツッコめよ。

「実は…。この雨の中申し訳ないんですが、お使いをお願いしたくて…」

…とのこと。