神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

こんな俺でも…少年達を救えるんだなぁ。

世界って素晴らしい。

「…かつてないほど清々しい顔してますね、キュレムさん」

「あぁ…。自分は今、空の青さに感動してるところだよ…」

「それは良いですけど、ジェラート溶けてますよ」

そうだな。

この騒ぎのせいで、食べ損なったヘーゼルナッツジェラートが。

暑さのあまり、早くも溶けて、俺の手の甲をべったりと汚しているが。

…安いものじゃないか。そのお陰で、少年達を救えたんだから。

俺の手が汚れて、ジェラートが溶けることくらい…何でもないさ。

涙目。

「ったく、油断も隙もない天使だ…。…って、あれ?」

その時になって、ようやく。

正気に戻ったジュリスが、こちらを振り向いた。

「…さっきのふざけたガキ共は?何処に行った?」

ぎくっ。

「え、えーと…。…ルイーシュが責任を持って、異世界に追放したよ」

「ちょっと。俺に罪をなすりつけないでくれます?」

だまらっしゃい。

さっき、俺を置き去りにして自分だけ逃げようとした、そのお返しだ。

明らかに、嘘だと丸わかりのはずだが。

「なんだ、そりゃ…。…まぁ良いか。今回は見逃してやるよ」

何だかんだ、ベリクリーデちゃんのご機嫌が治ったことで、怒りが消えたらしく。

それ以上の追及はなく、ジュリス火山の噴火は沈静化した。 

良かったぁぁ…。

九死に一生を得た気分。

「…仕方ない。ジェラートの代わりに…帰って、かき氷作ってやるよ」

「わーい。ジュリスのかき氷〜」

ベリクリーデちゃんの機嫌が治った途端、これだよ。

すっかり、いつものジュリスに戻ってしまった。

「クロティルダも、ジュリスのかき氷一緒に食べよ」

「俺も行くのか?」

「ねぇねぇ」

ぐいぐい、とクロティルダの服の裾を引っ張るベリクリーデちゃん。

可愛い。

クロティルダが意見を求めて、ジュリスの方を見ると。

ジュリスは、明らかに迷惑そうだったが。

「…仕方ないな。良いよ。お前も来いよ」

「そうか。では、同席させてもらうとしよう」

…良い感じに丸く収まってんな。

…それじゃ。

「ジュリス。俺はメロン味に練乳トッピングな」

がしっ、とジュリスの肩を掴んで、真顔で注文した。

「な、何だよ。お前も来るのかよ?」

「当たり前だ馬鹿ちん。俺だってジェラート食べ損ねたんだからな!」

おまけに、ちびっこ達を助ける為に、危ない吊り橋を渡ったんだ。

かき氷くらい食べさせてもらわないと、割に合わないっての。

「…まったく、暑いっていうのに、賑やかですね」

ルイーシュだけは、ちゃっかりとラムレーズンジェラートを舐めながら。

呆れたように、そう呟いた真夏の午後である。









END