神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ちょっと。おい、ジュリス。

クロティルダが来てるのに、ベリクリーデちゃんもとっくに泣き止んでるのに。

そんなことにも全然気づいてない、おかんむりのジュリス。

見ると、今にも魔法を発動しようとしていた。

やべぇって。これ。止めないと。

「ジュリス、ちょっと待て。ジュリス!」

「あぁ!?」

ちょっと肩を掴んだだけなのに、めっちゃキレられた。

危うく、俺まで消し炭にされかねん。

ひぇっ。

思わず涙目だが、俺は必死にクロティルダを指差した。

「ほら、ジュリス。クロティルダが。クロッティが、勝手にベリクリーデちゃんとイチャイチャしてるぞ」

全力で、クロティルダに責任転嫁していくスタイル。

…え?卑怯?

うるせぇ。

俺だって、人並みに命が惜しいんだよ。

そして、ジュリスには効果てきめんだった。

「は…?お前、いつの間に来たんだよ…!?」

まるで恋人のように、ベリクリーデちゃんの傍に寄り添っているクロティルダを見つけ。

ジュリスの怒りの矛先は、無事、少年達からクロティルダに向けられた。

よしっ。

心の中でガッツポーズ。

「いつの間にと言われても…。ついさっきだが」

「また勝手に、ベリクリーデの傍をうろついてたのか。このストーカー天使…!」

良い感じだ。

今がチャンス。

俺は急いで、少年達に駆け寄り。

彼らに向かって、小声で呼びかけた。

「今のうちだ。君達、早く逃げろ」

「えっ、えっ…?」

戸惑う少年達。

「良いから。早く逃げるんだ。今のうちに」

「は、はい」

「はよ行け。はよ」

俺は少年達を背中で隠し、背中の後ろに手を回し、しっしっ、と散らすように合図した。

更に、ルイーシュが。

「はい、これどうぞ。ボール蹴る時は気をつけてくださいね」 

彼らのサッカーボールを、そっと返却。

怯えていた少年達は、ハッと我に返り。

サッカーボールを受け取り、何度も申し訳なさそうに、ペコペコと頭を下げながら。

そそくさと、ジュリスの視線を掻い潜って逃げていった。

よし、無事に撤退したな。

超高難度ミッションをやり遂げた、そんな気分だった。