神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

とにかく。

クロッティー、ことクロティルダが来てくれれば、こっちのもんよ。

「ベリクリーデちゃん、ほら、ベリクリーデちゃん!」

「ふぇ…?」

「クロティルダが来てくれたぞ。ベリクリーデちゃんの元カレのクロティルダ」

「…クロッティ?」

ベリクリーデちゃんが、涙目で振り向くと。

そこには、真顔のクロティルダが立っている。

「どうした、我が姫。気分が優れないのか?」

「あ…。…クロティルダだ」

「あぁ」

ちて、ちて、と歩いて、クロティルダに近づくベリクリーデちゃん。

さながら、飼い主を見つけた子犬のようである。

「あのね、クロティルダ…。アイス…」

「アイス?」

「…ジュリスが買ってくれたアイス、落っことしちゃったの…」

ベリクリーデちゃんは、目をうるうるとさせていた。

どうやら、ベリクリーデちゃんが泣いていたのは。

ボールをぶつけられた頭が痛いからでも、ジェラートを食べられなかったからでもなく。

「ジュリスが買ってくれた」ジェラートを、落っことしてしまったから。

これが悲しかったらしい。

…めっちゃかわいそ。

「そうか…それは残念だったな」

「うん…」

ベリクリーデちゃんとクロティルダは、地面にしゃがみ。

無惨に潰れたイチゴジェラートを、じっと見つめていた。

「…だが、良かったこともある」

「…ふぇ?」

「見ろ。お前が落としたアイスに、早くもアリが寄ってきている」

クロティルダが指差した先を、見てみると。

…ほんとだ。

イチゴジェラートの、甘い匂いを嗅ぎ付けたのか。

アリンコ達が、わらわらと潰れたジェラートに集まってきていた。

仕事早いっすね。ルイーシュより早くね?

「お前が地面に落としたアイスを、こうしてアリが食べ、そのアリをまた別の昆虫が食べ…。そうやって命の輪が巡り、いつの日か、また形を変えてお前に恵みをもたらす日が来るだろう」

「…そうなの?」

「あぁ、そうだ」

…。

「…なんか、怪しいスピリチュアル系詐欺師みたいなこと言ってません?」

「…それを言うな、ルイーシュ」

俺も思ったけども。

良いんだよ。ベリクリーデちゃんが納得してるなら、それで。

「だから気に病むことはない。お前はアイスクリームを食べられなかったのではなく、見知らぬアリに幸福を与えたんだ」

「…そっかー…。…アリさん、喜んでるかな?」

「あぁ、きっとな」

「えへへ。アリさん、良かったねー」

…何?この優しい世界。

めっちゃ微笑ましいんですけど?

…で。

「お前ら、覚悟は出来てるんだろうな?」

ちびっこにガンを飛ばしているこっち(ジュリス)は、全然微笑ましくないんですけど?