神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…こうなったら。

「ほら、ベリクリーデちゃん。俺の。俺のジェラートやるから。ほら」

ジュリスを止められるのは、ベリクリーデちゃんしかいない。

せめてベリクリーデちゃんが泣き止めば、ジュリスの怒りも沈静化するかもしれない。

そう判断した俺は、パニクりながら、自分のジェラートをベリクリーデちゃんに差し出した。

自分のジェラートを犠牲にすることで、何とかベリクリーデちゃんの機嫌を治してもらおう…。

…と、思ったのだが。

「…」

ベリクリーデちゃんは、俺が差し出したジェラート(ヘーゼルナッツ味)には、目もくれず。

落っことしてしまった、イチゴジェラートを見つめながら、相変わらずぷるぷる震えていた。

「駄目なのか。ヘーゼルナッツ味じゃ機嫌は治らないのか…!?」

「イチゴ味が食べたかったんでしょうね、きっと」

と、ルイーシュ。

そうか。ってことは、ルイーシュのラムレーズン味のジェラートでも駄目だな。

「そうだよな…。イチゴとヘーゼルナッツじゃ、果物と木の実くらい違うもんな…」

…あれ?それ結局、同じものじゃね?

いや待て。イチゴは果物じゃなくて野菜…いや待て。

どうでも良いんだって、今。そんなことは。

「え、えぇっと、それじゃ…き、気の利いた一発ギャグでも披露して、ベリクリーデちゃんを宥められるか…!?」

「いやぁ、それはさすがに…。…キュレムさんの一発ギャグ程度じゃ、余計に泣かせてしまうのでは?」

「うぐっ…。た、確かに…」

俺が、本気で一発ギャグをやってみろ。

一瞬にして、地球に氷河期が来るぞ。

…なんて、言ってる間に。

「良い度胸だ、お前ら…。大人を舐めたらどんな目に遭うのか教えてやる」

やべぇ。ジュリスが、ついに一線を越えようとしている。

今にも杖を取り出して、チビッ子達を「粛清」してしまいそうだ。

どうすれば…どうすればこのピンチを乗り越えられる…!?

「ルイーシュ、お前、何呑気な顔してるんだよ。お前もなんか考えろ!」

「え?だって…。いざとなったら、俺は空間魔法で異空間に逃げるつもりなので」

「このっ…薄情者!」

ルイーシュは平気な顔をして、ペロペロと自分のジェラートを舐めていた。

どう思う?この態度。

お前を相棒だと思った、俺が馬鹿だったよ。

畜生。こうなったら身を盾にしてでも、少年達を守っ…、

…る、ような勇気は、俺にはないので。

…かくなる上は。

「そうだ、クロティルダ…。クロッティー!クロッティー!!いるーっ!?」

俺は全力で大声を出し、この場を切り抜けられるかもしれない、唯一の人物を呼んだ。

あの偉大な(?)天使ならば、ベリクリーデちゃんを慰め、ジュリスを宥めることが出来るかもしれない。

その時の俺は、虚空に向かって何やらデカい声を出して叫ぶ、怪しい不審者にしか見えなかったことだろう。

だが、形振り構ってられないから。

すると。

「…俺を呼んだか?」

何も無いはずの空間から、スッ、と姿を現す、一人のイケメン天使。

思わず、俺は親指を立ててガッツポーズした。

「やったぜクロッティ。ナイスストーカー天使!」

「…キュレムさん。それ、褒めてるんですか?貶してません?」

褒めてんだよ。最大級の褒め言葉だ。