神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「…何だよキュレム。やけに不機嫌だな」

「大丈夫?どっか痛いの?」

ベリクリーデちゃんが心配そうに、俺の顔を覗き込んだ。

「あ、いや…。別に、そういう訳じゃ…」

「夏が暑いという、当たり前のことにイラついてただけですよ」

ルイーシュが、俺の代わりに説明した。

そうなんだよ。

「そんなことにイライラしたって、仕方ないだろ…。イラつくと、余計に暑くなるぞ」

だまらっしゃい。

そんなことは分かってんだよ。

分かってるけど腹が立つの。人間って未熟な生き物だから。

「…とはいえ、今日はまた一段と暑いからな…。さすがに夏バテ気味だ」

「そうか…。ジュリスでもそうなるんだな」

「この暑さでも元気なのは、このベリクリーデくらいのもんだ」

ジュリスは、ベリクリーデちゃんをじろっ、と睨みながら言った。

ジュリスに嫌味を言われても、ベリクリーデちゃんは怯むどころか。

「えへんっ」

むしろ、褒めてもらったと胸を張って喜んでいた。

お可愛らしい。

「いや…あのな、褒めてるんじゃなくてな…」

「ねぇねぇ、キュレム。ルイーシュ、見て」

「何を?」

「これ、このお洋服」

ベリクリーデちゃんは、自分の着ているワンピースを指差した。

水色の、涼し気なノースリーブのワンピースだ。

胸元に、白くて細いリボンがついていて、とても可愛らしい。

そして何より、ベリクリーデちゃんによく似合っている。

「ジュリスが選んでくれたんだよー」

「へぇー…」

…やることやってんじゃないかジュリス君。えぇ?

「ジュリスさんって、少女趣味ですね」

まったくだルイーシュ。もっと言ってやれ。

「別に…俺の趣味じゃねーよ。こいつが、暑いってのに野暮ったい服ばっか着てるから…」

「ふーん」

ジュリスって少女趣味らしいぞ。

…って、聖魔騎士団全員に広めておいてやろう。

「で、何?ベリクリーデちゃんを着飾らせて、デートにでも行こうってのか?」

水ぶっかけてやろうか、ジュリス。打ち水と称して。

しかし、ジュリスは。

「誰がデートだよ。ちょっと、ジェラートを食べに行くだけだ」

「…ジェラート?」

「ベリクリーデにせがまれたんだよ。『アイス食べたい』って」

「…」

…やっぱりデートじゃないかよ。

ふざけんな。