神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

―――――…とある、夏の日のこと。



「あっちぃ〜…。…死にそう…」

「…暑いですね」

なんでさぁ。夏って暑いの?

ふざけんなよ。

「暑いという、この一点を除けば、夏って最高の季節なのにな。そう思わないか?」

「まぁ、そうですね」

「…あぁ、それとセミがうるせぇのも嫌だな」

「そうですね」

「…あ、それと夜中に蚊に刺されんのも嫌だわ」

「結構嫌なところありますね、夏」

「だな」

暑いのも最悪だし、セミと蚊も絶滅しろ(過激派)。

それさえなければ、夏って良い季節なのになぁ。

「はー…。年々夏が暑くなってるよな…。俺が子供の頃、絶対こんなに暑くなかったって…」

夕方には打ち水をして涼んで〜…。とか、小学校の夏休みの頃、やってなかった?

あんなもん、今となっては焼け石に水だぜ。

全然変わんねぇよ。何だよ打ち水って。

その水を頭から被った方が、まだ涼しいっての。

「暑いと、なんかイライラしてくるし…」

「そうですね」

暑い上に、外ではセミがみんみん鳴いてやがる。

みんみんっつーか、もっとけたたましい音がしてるぞ。

「わしゃしゃしゃしゃしゃ!」みたいな。

黙れこの野郎。

あー、駄目だ。暑さのあまり、めっちゃイライラしてきてるわ。

「ストレスたまるわぁ〜…。…はぁー」

「そうですね」

「…お前さんはさっきから、『そうですね』以外に言えないのか?」

ルイーシュに八つ当たりしてしまう始末。

だって、さっきから俺の生産性のない愚痴を、「そうですね」の一言だけで躱そうとしてんじゃん。

そうはさせねぇぞ。

「だって、俺、夏が暑いのって、あんまり関係ないんですよね」

「はぁ?」

「俺は杖の一振りで、異空間という名の避暑地へワープすることが可能…」

「あーはいはい。空間魔法使いは便利でちゅねー。あー凄いでちゅねー」

一人だけ安全地帯(という名の涼しい場所)に逃げやがって。

ふざけんな。

空間魔法なんて、有害魔法指定されてしまえ。

まったく。

夏は暑いし、セミはうるさいし、相棒はインチキ空間魔法使いだし。

ろくなことがねぇや、と深々と溜め息をつこうとした…。

その時。

「…ん?キュレムとルイーシュじゃないか」

「あ?」

振り向くと、そこにジュリスとベリクリーデちゃんがいた。

…ごめん。素でめっちゃ不機嫌そうに返事しちゃったわ。