神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

マシュリと言い、こいつと言い、人外の生き物はやけに自分の命を軽く見る。

…ムカつく。

腹が立ったから、俺はクロティルダの足をげしっ、と踏みつけてやった。

「…何故蹴る?」

「うるせぇ」

お前がつまんねぇこと言うからだ。

次同じこと言ったら、両足踏んでやるから覚えてろ。

「…で、話を戻しますけど」

と、ルイーシュ。

「これどうしたんですか?」

ぐつぐつ煮えたぎる鍋の中を指差して、そう尋ねた。

…それを聞かれると、非常に答えづらいんだが。

「川に行って、獲ってきたんだよ」

俺の代わりに、ベリクリーデが答えてくれた。

「いっぱい獲れたんだよ。ザリガニ」

「…で、これ食べるんですか?」

「え、食べないの?」

「…成程」

…ごめんな、ルイーシュ。 

お前の言いたいことは痛いほどよく分かるんだが。

ベリクリーデと来たら、草むらで見つけたトノサマバッタでさえ、食糧とみなして口の中に入れるようなヤツだから。

今回は、かろうじてまだ茹でてから食べようとしてるから。

それだけでも進歩だと思ってくれ。

「…大丈夫だ。しっかり茹でてるから、寄生虫の心配はない」

「…それでもぶっちゃけキモいけど」

そうか。

「まー、でもザリガニって、元々は食用なんだっけ?」

「エビとカニの中間みたいな味がする、って聞いたことありますね」

そうなんだよ。

見た目はアレなんだが、味は結構イケるんだ。

塩茹でするだけでも美味い。

「…どうだ。一緒に食べて行くか?」

「美味しいよ、ザリガニさん」

「何ならアユもいるぞ」

俺、ベリクリーデ、クロティルダの順に言うと。

キュレムとルイーシュは、互いに顔を見合わせ。

「…。…これも何かの縁だ。付き合ってやろうじゃないの。人生初、ザリガニ」

「そうですね。先にキュレムさんが食べてから、俺も食べてみますよ」

「おい。俺を毒見役に使おうとするな」

あ、そう。

それじゃ、折角だし一緒に食べてってもらうとするか。